2007年10月19日(金)「しんぶん赤旗」

自衛隊を撤退させ、政治的解決のための外交努力を

テロ新法案で志位委員長


 日本共産党の志位和夫委員長は十八日の記者会見で、政府が前日に国会提出した新テロ特措法案と、民主党がISAF(アフガニスタン国際治安支援部隊)への参加を検討していることについて見解を問われました。志位氏の答え(要旨)は以下のとおりです。


米報復戦争支援の基本はまったく変わらず

 与党のテロ新法案は、アメリカの報復戦争を軍事的に支援するという枠組みの基本はまったく変えないものです。

 海上阻止活動への支援に限定するとしていますが、米軍は、アフガンへの空爆などの軍事作戦と、海上での阻止活動と、イラク作戦という三つの作戦は区別せずに一体でやっています。わが党の小池晃政策委員長が、参院予算委での質疑で明らかにしたように、たとえば強襲揚陸艦「イオウジマ」は、日本の補給艦「ましゅう」から給油を受けて、イラク作戦も、アフガン作戦も、海上阻止活動もやっているわけです。日本が「ここに限定しますよ」といって、油の「入口」は一つでも、油の「出口」は三つとなり、すべてに使われることになります。

 憲法に背反した報復戦争支援の枠組みという点ではまったく変わらず、私たちは反対です。

戦争でテロはなくせない――大局的議論こそ必要

 いま根本から吟味が必要なことは、六年間の現実をみれば、報復戦争によってテロは拡大し、アフガニスタンの情勢が悪化したということです。

 タリバンはいま全土の半分ぐらいを実効支配しており、それに対して米軍は、タリバンを軍事的に一掃する作戦をやっています。OEF―MIO(海上阻止活動)も、その一部です。国連安保理決議に基づき治安維持の名目でつくられたISAF(国際治安支援部隊)の活動もOEF(不朽の自由作戦)と事実上統合・合体して、米軍中心の報復戦争と一体になって掃討作戦をやり、これがアフガン情勢をいっそう悪化させています。

 タリバンを撲滅するという軍事一本やりから政治的解決に道を切り替える。それをすすめてこそ、貧困、飢餓、干ばつとか、教育といった民生支援も実効あるものになります。

 福田内閣の答弁を聞いていると、“アフガンの状況はよくなったじゃないか”という調子の答弁が返ってきますが、実態はそうではありません。ですから、この根本からの議論が必要です。

報復戦争から政治的交渉による解決への転換を

 日本国際ボランティアセンター(JVC)が最近声明を出し、「対テロ戦争を見直し、敵対勢力やパキスタン、イランなど周辺国を含むすべての紛争当事者と包括的な和平のための協議を始めるべき」だと表明しています。

 私は、去年九月にパキスタンを訪問しました。アフガニスタンとの国境にワジリスタンという地域があります。パキスタンはここの(武装)勢力にたいして、最初は掃討作戦をやっていました。それではますます事態が悪化するということで、政治的交渉へと変えたんです。ワジリスタンの部族長と交渉すると、たとえば学校をつくってほしいとか、水道を引いてほしいという要望がでるわけです。そういう要望に応え、パキスタン軍の駐留を制限するかわりに、外国人テロリストの出撃基地にはしないという協定を結ぶのです。今年に入って武装勢力との戦闘が激化するなど、問題の解決までは、まだ時間がかかると思いますが、交渉による解決は理性的なやり方だと思います。

 パキスタン政府がこういうやり方をぜひアフガニスタンでもと提起したら、カルザイ政権もそれに応えて、タリバンに対しては政治的交渉による解決を図っていこうというところに、いま踏み出そうとしています。

 国際社会は、こういう動きをバックアップし、報復戦争から政治的プロセスによる解決を支援する方向に切り替える必要があります。大局的に、どうしたらテロがなくせるか、どうしたらアフガン情勢をよくできるかという真剣な議論こそ国会で必要になっています。

ISAF参加論では大義を失う

 ISAFは二〇〇一年に、当時のカルザイ暫定政権を治安面でサポートする治安支援部隊としてつくられました。しかしだんだん性格が変わってきて、いまでは戦争をやっているわけです。自衛隊の参加は憲法に違反します。

 自衛隊を何らかの形で出さねばならないということにしばられると、野党の側も、与党によるテロ新法案を食い止めるうえで大義を失うことになります。報復戦争全体が間違っていたわけだから、それを政治的アプローチに軌道を転換する、そのための外交努力を、国連やさまざまな場で日本がおこなう。そういう外交努力こそ大事であり、それとあわせて民生支援をおこなう、それが日本に一番求められていることだと思います。

 自衛隊を引き揚げることが、日本としてはまず一番の貢献になります。外国軍の存在が憎しみをあおり、テロの土壌が拡大する悪循環をつくっているのです。自衛隊はまだ海の上ですが、それでも存在が知られるようになれば、やはりアフガン国民の批判を買うことになるでしょう。ましてや地上軍に参加することになったら、憎悪の対象になります。