2008年8月30日(土)「しんぶん赤旗」

「政治の中身の変革」を正面から訴える

秋の国政にのぞむ基本姿勢について

CS放送 志位委員長の発言(要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長は、二十九日放映(二十八日収録)のCS放送・朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、秋の国政にのぞむ基本姿勢などについて、朝日新聞の本田優編集委員のインタビューにこたえました。


太田農水相疑惑――説明できなければ大臣の資格なし

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(写真)朝日ニュースター「各党はいま」でインタビューにこたえる志位和夫委員長

 本田 臨時国会は九月十二日召集ですが、早くも農水相の事務所費問題が火を噴きはじめました。

 志位 いま分かっていることだけでも、家賃を払っていなかった、専用スペースもなかった、専任の職員も雇っていなかった。架空の事務所だったという疑惑がきわめて濃厚ですね。太田大臣は、疑惑について説明する責任がある。それができなければ大臣の資格なしといわざるをえません。

 本田 内閣改造した途端ですから、福田政権としての責任の問題も出てくるのではないでしょうか。

 志位 そうですね。(事務所費問題という)まったく同じ性格の問題が繰り返し起こっていることが、とくに重大です。改造するのなら、最小限のチェックをすべき問題であり、(首相の)任命責任が問われてきます。

“進退窮まった”福田内閣――政治の中身の根本的な変革を

 本田 八月に発足した福田(改造)内閣について、どういう評価をお持ちですか。

 志位 一言でいって、福田内閣はあらゆる点で“進退窮まった”というのが私の感想です。

 経済政策では、小泉政権以来、「構造改革なくして成長なし」と、労働のルールを壊す、社会保障を切り捨てる、農業を破壊する、あらゆる点で庶民の生活を痛めつけてきた。一部の輸出大企業だけに大もうけをさせてきた。その結果が貧困と格差の社会でのまん延です。これ以上の「構造改革」の加速はいえなくなった。かといって、間違いでしたと抜本的な方策の見直しもできない。引くも、進むもできず、“進退窮まった”という状況です。

 外交でも、アメリカいいなりで、(イラク・アフガン)戦争に賛成し、自衛隊派兵を続けてきたわけだけれども、この対応がイラクの泥沼化、アフガンでの治安の悪化など、現場で通用しなくなる。国際的にも孤立する。これも引くも、進むもできず、“進退窮まった”。

 本田 この内閣が一体何をしようとしているのか。どうもメッセージがはっきりしないという感じがします。

 志位 そうですね。進退窮まって、立ちすくんでいるという感じですね。ここまでゆきづまったのなら、政治の中身の根本的な変革こそ必要です。「構造改革」路線がゆきづまったのならば、大企業から家計に軸足を移す経済政策の大転換が必要だし、アメリカいいなりの軍事優先路線がゆきづまったのならば、自主自立の平和外交へと大転換が必要です。日本の政治は、そういう大きな転換を求める歴史的な時期に来ていると思います。

国民の生活の悲鳴、苦しみに応え、政治の責任をはたす国会に

 本田 そうすると臨時国会の焦点は何だとお考えですか。

 志位 まずは国民の生活の悲鳴、苦しみが、ほんとうに深刻で極限のところまで来ていますから、それに応える国会にしなくてはなりません。

 いまの日本経済、国民生活の危機というのは、いわば“二重の危機”が重なって起こっている危機だと思います。

 一つは、「構造改革」路線がもたらした危機です。内需・家計を痛めつけながら、一部の輸出大企業だけを国をあげて応援する。それが日本経済をゆがめにゆがめ、外需頼みの経済にしてしまった。世界経済がおかしくなり、外需が落ち込むと、途端に日本経済全体がぺちゃんこになるという非常に脆弱(ぜいじゃく)な経済をつくってしまった。雇用、社会保障、農漁業、中小企業、税制などあらゆる分野で、経済政策の軸足を、外需から内需へ、大企業から家計へと移す改革が必要です。

 もう一つは、日本経済が土台から脆弱になってきたところに、投機マネーの暴走による世界的規模でのインフレがかぶさってきたということです。巨額の投機マネーが、原油や穀物などの先物市場に流れ込んで、高騰をつくった。日本でも庶民生活、農業者・漁業者・中小企業などに特に重くのしかかっています。燃油代高騰などへの緊急対策とともに、投機マネーの国際的な規制に踏み切ることが必要です。

 この“二重の危機”から国民生活を守るための抜本的方策をとることが、臨時国会の大きな課題になっています。

早期解散の可能性も――「政治の中身の変革」を太く打ち出して

 本田 解散・総選挙はいつだと考えておられますか。

 志位 自民党からすれば、(解散は)引き延ばせば引き延ばすほどいいという対応をしてきたと思いますが、先ほどいった“進退窮まった”という状況が生まれてきた。その状況が与党内にもあつれきや矛盾を生んでおり、思惑どおり動かない状況がある。私たちは、年内あるいは来年年頭の解散・総選挙の可能性が生まれてきたと考えています。いつ解散・総選挙となっても、必ず前進・躍進できるよう、大いに攻勢的にがんばりたいと思います。

 本田 総選挙の争点というのは、どうなりますか。

 志位 国民の熱い要求と結びつけて、財界とアメリカ中心の政治から、国民中心の政治に大きく転換することを、訴えていきたい。「自民か、民主か」、どちらが政権の担い手になるかが総選挙の焦点だとする見方もありますが、そこに焦点があるのではない、政治の中身を変えることにこそ焦点がある、それを担える党は日本共産党だということを太く打ち出してたたかいます。

 いま日本共産党以外の政党の立っている位置は、財界やアメリカとの関係でいいますと、だいたい同じ流れの中にあるわけです。だからこそ、昨年のことだけれども、福田首相と小沢代表が密室で会談をやって、いったんは「大連立」で合意するというようなことも起こるわけです。憲法(改定)でも、消費税(増税)でも、だいたい同じ流れです。政治の中身を変えずに、政権の担い手だけを変えてみても、日本の政治の未来は開けてきません。中身を変える立場をもっている党はどの党かを、見極めて選んでほしいと思います。

アフガン問題――NGO団体も 「紛争を軍事的手段で終わらせることはできない」

 本田 アフガニスタンのジャララバードでNGO「ペシャワール会」の人が誘拐され、殺されました。この事件をどう見ますか。

 志位 伊藤(和也)さんの殺害に対して、心からの憤りを感じます。アフガニスタンの現地の人々に本当に望まれていた農業支援、民生支援のために奮闘していた青年がこういう形で亡くなったことは、本当に痛ましいことです。

 この事件の大きな背景には、アフガンの治安が最悪の状況になっているということがあります。テロに対して報復戦争で対応した。それが憎悪を広げ、悪循環がいよいよひどくなっています。

 アフガニスタンで活動する百の国内・国際NGOの調整機関(ACBAR)が、八月一日に声明を出しています。ここに持ってきましたが、「今年に入ってからの民間人犠牲者は千人に達するかもしれない」「国際軍事部隊による空爆の増加が、民間人死亡者の増大の原因になっている」「アフガン軍および国際部隊による捜索のさいには、ときに過剰な武力行使、司法外の殺害、所有物の破壊、容疑者の虐待などがおこなわれてきた」などとのべています。こうした事態が、外国人全体に対する憎悪の感情をつくりだす土壌ともなった。そして、「今年は現在まで十九人のNGOスタッフが殺害され、昨年一年間の殺害数をすでに上回っている」とのべています。(米軍などの)軍事作戦によって、民生支援のために頑張っているNGOの活動に、深刻な障害が持ち込まれているのです。声明は、最後に、「紛争を軍事的手段によって終わらせることはできない」こと、「農村開発と必需サービス」、「和平構築イニシアチブ」など、「持続可能な平和を達成するための一連の措置が必要であるとの強固な信念を強調する」と結んでいます。

 戦争では絶対に問題を解決できない。民生支援と、和平構築のための政治的解決に切り替えなければ、アフガニスタンの現状は絶対に好転しないということを、現地で一番苦労されているNGOの方々が共同の声明で訴えていることは、たいへん重いものがあります。

 テロに戦争で対応するやり方は失敗しました。政治的・外交的な和平プロセスと、貧困や飢餓をなくしていく民生支援を組み合わせて、問題解決をはかるということこそ大切です。日本政府が、米軍の武力行使を応援するための給油活動をただつづけるということに固執することは、憲法をふみにじるだけでなく、現地の求めるものともまったく違った方向だということを、強調したいですね。