2008年9月25日(木)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が二十四日、国会内で開かれた党議員団総会でおこなったあいさつは、次の通りです。


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(写真)議員団総会であいさつする志位和夫委員長=24日、衆院第2議員会館

自民党・麻生新体制――行き詰まりへの反省も、打開策もない

 解散・総選挙につながる重大な国会が幕を開けました。国会開会にあたってごあいさつを申し上げます。

 一昨日、自民党・麻生体制が発足しました。麻生氏の会見を聞きましたが、一言でいって、ここまで深刻になった自民党政治の行き詰まりにたいする反省もなければ、打開策もないというのが特徴だと思います。

 麻生氏は、「日本経済は全治三年」と述べました。「全治」が三年かどうかは別として、経済と暮らしが「重症」に陥っているのは、これはまぎれもない事実です。しかし、いったいだれが経済と暮らしを、ここまでひどい「重症」に陥れたのか。「構造改革」という名のもとに、一部の大企業のもうけだけを応援することに熱中し、国民には痛みばかりを押し付けて、貧困と格差を広げに広げた、まさに自公政権の責任であり、そしてその閣僚だった自らの責任ではありませんか。(拍手)

 ところが、その自覚が全くない。だからまともな打開策も出てきません。麻生氏は、「改革には痛みがでる。だから痛み止めが必要だ」といって、「痛み止め」を飲ませながら、「構造改革をすすめていく」ということを総裁選のなかでいいました。しかし、国民がいま求めているのは、「痛み止め」ではありません。「痛み」を押し付ける政治そのものをやめてくれというのが国民の声ではないかと、私はいいたいと思うのです。

「二つの政治悪」を大もとから正す改革の旗印を高く掲げて

 二代にわたる政権投げ出しというのは、あまりにひどい大企業中心主義、異常なアメリカいいなりという「二つの政治悪」を特徴とする自民党政治が、いよいよ立ち行かなくなったことを示すものです。にもかかわらず、後任者には、そのことの反省もなければ、打開策もない。破たんした路線に、取りつくろいと、ごまかしをほどこしながら、しがみついているというのが、自民党政治の末期的姿だといわなければなりません。

 この国会で、日本共産党は、自民党・麻生政権と正面から対決し、国民の利益に立って、大企業中心・アメリカいいなりという「二つの政治悪」を大もとから正す改革の旗印を高く掲げて頑張りぬきたい、その決意をのべるものです。(拍手)

衆参の予算委員会で、徹底審議をおこない、争点を明らかにして審判を仰げ

 麻生氏は、今日の本会議で、新首相に選出されるでしょうが、国民の審判を受けていない三人目の首相となるわけで、解散・総選挙を避けることはできないし、これをおこなうことが当然であることは、いうまでもないことです。

 同時に、この国会では、国民の審判を仰ぐ前に、やるべき重大な仕事があります。それは、国政の基本問題について、衆参の本会議だけではなくて、予算委員会をしっかり開いて、徹底的に審議をし、争点を明らかにしたうえで、審判を仰ぐ、これが民主政治の常道だということを強調しておきたいと思います。

汚染米――自民党農政の抜本的転換をもとめる論陣を

 食の安全にかかわって、この間、汚染米の問題が一大社会問題となりました。悪徳業者の責任はもちろん重大ですし、汚染米と分かっていながら流通にまわしていた農林水産省の責任もきわめて重大で、時期遅れの大臣の首のすげかえだけですまされる問題でないことはいうまでもありません。

 しかし、同時に、問題の根本を見る必要があります。根本には、年間七十七万トンものお米をミニマムアクセス米と称して必要もないのに輸入してきた問題がある。さらに、「小泉改革」の際に、米の流通の管理責任を、国が完全に放棄する規制緩和をすすめてしまった。この自民党農政の二つの重大な責任が問われているのです。この根本にメスを入れ、食料自給率の向上に向けた農政の抜本的転換を求める論陣を張っていきたいと思います。

「働く貧困層」の解消へ――派遣法の抜本改正をもとめる

 「働く貧困層」の問題について、わが党は若者や労働者のなかに広がる「使い捨て」労働の問題、派遣労働の問題について、それを大もとからただす論戦をおこなってきました。それが労働者のたたかいとあいまって政治を動かし、与野党こえて派遣法改正の議論がおこっています。ここまで追い込んできたからには、中途半端な取りつくろいではなくて、一九九九年の派遣法の大改悪――原則自由化前に戻す抜本的な法改正を求めてたたかい抜きたいと思います。

 同時に、私がこの場で強調しておきたいのは、徳島県の日亜化学、あるいは栃木県のキヤノン宇都宮工場などで、偽装請負を告発した労働者が逆に職を失う、雇い止めにあうという事態が各地であいついでいることは、絶対に放置できないということです。無法を告発した若者が職を失う、それに無力な政治でいいのか、これはきわめて重大な問題であります。

 こうした無法の是正を求め、またそうした企業の横暴を許さない法改正を強く求めていきたいと思います。

後期高齢者医療問題――政府・与党に大きな動揺、撤廃へ力つくす

 後期高齢者医療制度への国民の怒りは、広がる一方であります。国民世論とわが党の論戦に押されて、政府・与党の中で大きな動揺が起こっております。舛添厚生労働大臣が後期高齢者医療制度に代わる「新制度の創設を検討する」という発言をおこないました。麻生氏自身も、「抜本的に見直す」「年齢で区分するのはどうか」ということを言いました。

 しかし昨日、自民・公明両党の党首会談では、後期高齢者医療制度について、「より良い制度に改善する」と合意した。つまり、現在の制度は「よい制度」だとして、この制度の存続を前提にした議論になってきております。

 年齢で別枠の制度をつくるという制度の根本部分で「見直しが必要」だと、つまり制度の根幹での破たんを認めながら、なおそれにしがみつくという深刻な矛盾に立ちいたっているのが、政府・与党の状況です。これはきっぱり撤廃で決着をつけるしかありません。この論戦も大いに意気高く取り組んでいこうではありませんか。(拍手)

世界経済の危機的事態――日本経済のあり方が根本から問われている

 世界経済の危機的事態とのかかわりで、日本経済のあり方が根本から問われています。リーマン・ブラザーズという大手の投資銀行の破たん、世界経済の暗転というもとで、日本経済がいかにあるべきか。私は、二点ほど強調しておきたいと思います。

 一つは、こういう事態のもとで、日本経済が異常な「外需頼み、内需ないがしろ」という脆弱(ぜいじゃく)な体質を持っていることが、大問題になっているということです。これまで自公政権が、「構造改革」という名でやってきたことは、「一部の輸出大企業の競争力を強めさえすれば、日本経済はよくなる」というやりかたでした。そのもとで外需=輸出は異常なまでに膨れあがった。しかし、内需とりわけ家計は犠牲とされ低迷しました。そのことが非常に脆弱な経済をつくりだし、外からショックが加えられたらいっぺんに経済そのものが沈没するという事態をつくりだしています。

 ですから、国際的な経済危機との関係でも、日本経済を立て直すには、そういう脆弱な体質をそのままにして、そこに「カンフル剤」を打ったり、「ばらまき」をやったりしても、解決するものではありません。この脆弱な体質を根本から治す改革が必要です。人間らしく働ける労働のルールをつくる、人間らしい暮らしを支える社会保障の充実をはかる、こういう雇用や社会保障という暮らしの土台をよくしていく政治に切り替え、内需主導の経済にしていく、経済政策の軸足を大企業から家計に移す――こうした大きな転換が、世界経済の現状とのかかわりでも必要だということを強調しておきたいと思います。

 いま一つ、強調しておきたいのは、アメリカで起こった事態というのは、「投機によって経済を活性化させる」というカジノ資本主義が破たんしたということです。こういうやり方がどんなに危険かを示したものにほかなりません。

 ところが自民党政治というのは、そうした投機経済に追随してきたわけです。「投機マネーを外から呼び込めば、日本の経済は活性化する」として、金融の自由化をすすめてきた。さらに、「貯蓄から投資に」といって、国民の大事な財産を投機のリスクにさらす、こうした動きをすすめてきた。今回の事態は、米国流のカジノ資本主義に追随した金融自由化路線がどんなに危険であるかも、示したものにほかなりません。アメリカ追随のカジノ資本主義に決別せよということも、強く求めていかなければなりません。

憲法違反の自衛隊派兵を中止し、すみやかな撤退を求める

 アフガニスタンでの米軍の戦争支援のための海上自衛隊の派兵問題も、この国会で糾明すべき大問題であります。

 麻生氏は、「世界各国がテロとたたかっている中で、日本だけが撤退できない」ということを総裁選で繰り返しのべました。しかし、戦争でテロはなくせたか。それがかなわなかったことは、アフガニスタン戦争から七年たってのアフガンの実態――テロと戦争の悪循環という実態が証明しているではありませんか。アフガン問題の解決に必要なのは、軍事力ではありません。政治的プロセスによる和平への努力と、テロの根源となっている貧困をなくす民生支援こそ求められています。

 憲法違反の自衛隊の派兵を中止し、すみやかな撤退を求める論陣も大いにはっていこうではありませんか。

 国民の切実な暮らしの願い、平和の願いの根っこをたどりますと、大企業中心・アメリカいいなりという「二つの政治悪」にぶつかってきます。どんな問題でも、国民の切実な要求から出発しながら、その打開のために不可欠な改革を提起する、そういう論戦を大いに展開していきたいと思います。

国民に正体を隠したままの「ぼろ隠し解散」は民主政治に反する

 この国会では、少なくとも、以上のべたような国政の基本問題について、徹底的な論戦が必要です。

 そのなかで、政府は、補正予算案を提起するといいますが、そうであるならば、この補正予算案についても、徹底的な審議が必要です。政府の「経済対策」の中身についていいますと、たとえば後期高齢者医療制度も、存続を前提にした「見直し」になっています。すなわち、自公政治の間違いの大もとには手をつけないで、表面の取りつくろいをはかろうというものになっています。ですから、補正予算案については、わが党は、抜本的な転換を提起して、徹底的に国民の前で論戦をしていくというのが、わが党の立場であります。

 与党の一部から、そうした徹底的な論戦を避けたまま、「支持率が下がらないうちに解散を」、「ぼろがでないうちに解散を」という声が、いまだに根強く出ているのは、異常なことというほかありません。これは、国民に正体を隠したままの「ぼろ隠し解散」というべきものであって、民主政治の常道に反するということを、強く批判しておきたいと思います。(拍手)

総選挙勝利につながる「日本共産党ここにあり」といえる論戦を

 この国会の先には、解散・総選挙という国民の審判が待っています。この国会でのわが党の論戦が、「日本共産党ここにあり」といえる論戦、日本共産党が議席を伸ばせば必ず日本の政治は変わると多くの国民に期待していただけるような論戦となるよう、お互いに力をつくす決意を固めあって、私のあいさつとします。ともにがんばりましょう。(拍手)