2009年8月29日(土)「しんぶん赤旗」

「建設的野党」の躍進こそ、政治を前に動かす最大の力

総選挙最終盤 志位委員長の訴え


 日本共産党の志位和夫委員長が27日、東京都八王子市で行った最終盤の訴えは次のとおりです。


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(写真)訴える志位和夫委員長=27日、東京都八王子市

 みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫です。(「頑張れ」の声、拍手)

 私たち日本共産党は、今度の選挙で、自民、公明の政権の退場を訴えてまいりました。ここにきまして、すでに流れは決定的になったと思います。「自公政権ノー」の声は国民の圧倒的な流れになったと私たちは考えております。(大きな拍手)

 私は、そういう情勢の変化をふまえて、自公政権退場後に、日本の政治をさらに前にすすめるうえで、どうか日本共産党を大きく伸ばしてほしい、全国どの比例ブロックでも、この比例東京ブロックでも大激戦、大接戦ですが、必ず前進・勝利を勝ち取らせていただきたい、そのことを心からお願いするものであります。(大きな拍手)

第一の仕事――「良いことには協力、悪いことには反対、問題点はただす」

 自公政権を退場させた後には、民主党中心の政権ができるでしょう。そのときに日本共産党は、「建設的野党」として、つぎの二つの仕事をしっかり果たしていくことをお約束するものです。

 第一の仕事は、国民の利益にたった政策をどんどん提案し、「良いことには協力、悪いことにはきっぱり反対、問題点はただす」、この仕事をしっかりとやり、現実政治を前に動かす仕事をおこなうことであります。(拍手)

「良いことには協力」――すでに実現にむけて動きだしているものも

 「良いことには協力」という点では、日本共産党が、この間、ずっと力を入れて主張してきた問題があります。

 労働者派遣法を抜本改正して「雇用は正社員が当たり前の社会」をつくろう。お年寄りを差別する後期高齢者医療制度は撤廃しよう。障害者自立支援の名で障害が重い方ほど重い負担をおしつける「応益負担」は廃止しよう。生活保護の母子加算まで廃止して、育ち盛り、食べ盛りの子どもさんの食費や衣服費まで切り縮めざるを得ない、こんな状態にまで追い込んでいる。母子加算を復活しよう(「そうだ」の声、拍手)。日本の学費が重過ぎます。中途退学や、進学をあきらめざるを得ない子どもさんがたくさんいる。高校の学費は無償化し、奨学金は返済不要の給付制の制度を創設しよう(「すばらしい」の声、大きな拍手)。こういう一連の政策を掲げてまいりました。

 どれもが、共産党が先駆的に一貫して提案してきた問題ですが、多くの国民のみなさんの声になっておりますから、民主党のマニフェストにも、こうした問題では共通する方向が書き込まれております。ですから新政権ができましたら、こうした一連の課題は、ぜひ協力し、またよりよいものとして実現するよう、具体化と実行をしっかり迫っていきたいと決意しているしだいであります。(「よし」の声、大きな拍手)

 この間、党首討論がやられましたでしょう。そのなかで実現に向けて動き出しているものもございます。この前の日曜日(23日)、フジテレビでも党首討論会がやられました。その最後に、VTRで中学校の生徒が発言したのです。「政治家の人たちはけんかばかり。もうちょっと仲良くすればいいのに」。私はとてもいい発言だと思いまして、その場で、「一つ提案があります。与党も野党も給付制の奨学金を言いはじめている。一致点はどんどん進めましょう」とよびかけました。そうしましたら、与党も「(給付制は)支持している」(公明党代表)と賛成し、野党側からも賛成の声があがり、与野党一致となりました(拍手)。政治が一歩動きました。

 こういう仕事をいろんな場面でやって、現実政治を、みなさんの願いがかなう方向にリードする役割を、しっかり果たしていく決意でございます(拍手)。そのためにも、国民の利益に立って頑張る日本共産党を伸ばしてください。(大きな拍手)

「悪いことにはきっぱり反対」――日米FTA、比例削減、消費税増税、憲法改定

 同時にみなさん。「悪いことにはきっぱり反対」をしてまいります。

 民主党のマニフェストを見ますと、たとえば「日米FTA(自由貿易協定)の交渉促進」と書いてあります。これはたいへんな問題であります。日米間の関税をなくしてしまう。そうなりますと、農業とコメが壊滅的打撃を受けます。とくにコメが82%もつぶされてしまいます。私は、公示日直前(17日)の日本記者クラブの党首討論会で、民主党の鳩山代表に、「交渉に入るべきではない」と強く求めました。これにたいして鳩山代表は、「自由貿易は当然だ」というようなことを言いました。しかしみなさん、自由貿易といいましても、工業製品と農産物は違うのであります(「そうだ」の声、拍手)。どこの国だって、自分の国で食べるものは自分の国でつくるというのは当たり前ではないですか。ヨーロッパにいきましたら、日本のコメにあたるのは牛乳と乳製品です。ちゃんと高い関税をかけて守っていますよ。どこの国だって主食は守るのが当たり前、日本人の主食であるコメまでもアメリカに売り渡すようなやり方は、共産党は絶対に反対であります(大きな拍手)。私たちは日本農業再生の大黒柱として頑張っていく決意であります。(大きな拍手)

 それから、民主党のマニフェストの中に「衆院比例定数80削減」ということが書いてあります。これもたいへんな問題です。いまの選挙制度のなかで国民のみなさんの民意を国会に反映する一番民主的な部分が比例代表制でしょう。これが半分になってしまったら、国会は自民、民主だけで95%の議席が独占されてしまいます。そうしたら国民の多数の声が国会に届かなくなるじゃありませんか。こういう民主主義破壊の横暴を始めようとしたら、日本共産党は、広い国民と連帯して、日本の民主主義を守るために頑張ることをお約束するものであります(「よし」の声、大きな拍手)。民主党は、「政治家が率先して身を削る」といいますが、「身を削る」というのだったら真っ先にやることがあるじゃないですか。年間320億円の政党助成金こそ撤廃せよと、私たちは求めるものであります。(大きな拍手)

 さらに、民主党のマニフェストの中には、消費税の増税、憲法9条の改定の方向も書いてあります。こういう危ない方向に日本の政治がすすもうとしたら、私たちは、日本の暮らしと平和と民主主義を守る「防波堤」として頑張りぬくことをお約束するものです。(歓声、大きな拍手)

「問題点はただす」――高速道路無料化、子ども手当、財源論

 「良いことには協力、悪いことには反対」にくわえて、もう一点あるんです。それは、「問題点はただす」ということです。

 たとえば民主党のマニフェストの中には「高速道路の無料化」ということが入っております。これは、税金の使い方の優先順位として正しいでしょうか。地球環境のことを考えても正しいやり方でしょうか。私たちは優先順位が違うのではないかと考えています。私たちは、高速道路の無料化よりも福祉を優先させるべきではないかと考えております。(「その通り」の声、拍手)

 高速道路の無料化に必要な予算は1兆3千億円です。私たちは、75歳以上の高齢者と子どもの医療費の無料化を、国の制度として実現しようと訴えています(拍手)。それをやるのに必要なお金が、ちょうど1兆3千億円です。どちらを優先するべきか。福祉を優先するのが当然ではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 それから、民主党のマニフェストの中に「子ども手当」というのがあります。私たちも、子育て支援のための給付を拡大することは必要だと考えておりまして、児童手当を2倍の1万円に引き上げ、段階的に18歳まで拡大していく現実的な提案をしています。しかし、(民主党のように)「子ども手当」の財源を庶民増税でまかなうというのは理解が得られないのではないでしょうか。民主党は、抱き合わせで配偶者控除と扶養控除を廃止するというんです。そうしますと、子どもを持っていないご家庭、子どもを持ちたくても持てないご家庭、子育てをおえたご家庭には、増税だけがかぶさることになります。増税が600万世帯以上となります。一部の国民を犠牲にして、ほかに回すというやり方は、私は国民の理解は得られないのではないかと考えますがいかがでしょうか。(大きな拍手)

 さらに、民主党の政策の中で、心配なのは財源です。民主党の財源論というのは、「当面は無駄づかいを削る」ということと、「将来は消費税を上げる」ということの二つしかありません。欠けているものがあります。軍事費を削るということ(拍手)、そして大企業・大資産家にちゃんと負担をさせるということ、この二つが欠けているんじゃないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。私たちは、この二つをきちんとやれば、消費税などに頼らなくても暮らしを良くする財源をつくれると具体的に提案しています。ですから、どうか安心して消費税増税反対の声をあげようではありませんか。(大きな拍手)

 「良いことには協力、悪いことにはきっぱり反対、問題点はただす」。こういう「建設的野党」が伸びてこそ、国民の利益をまもる一番たしかな力となるのではないでしょうか。(「がんばれ」の声、大きな拍手)

第二の仕事――政治のゆがみを大本からただし、「国民が主人公」の日本に踏み出す

 「建設的野党」としての第二の仕事は、自民党政治のゆがみを大本からただし、「国民が主人公」の新しい日本に踏み出すという仕事です。

 自公政権が退場した後に、どういう新しい日本をつくるか。私たちは、自公政権の一番悪い特徴である「財界中心」「日米軍事同盟中心」という政治のゆがみの大本をただして、憲法に書いてある通りの「国民が主人公」の新しい日本に踏み出そうではないかと訴えています。(拍手)

 この問題には、二つの大きな焦点があります。

「財界主導の政治」と決別してこそ、国民の暮らしを守れる

 一つの焦点は、「財界主導の政治」から抜け出せるかということです。私は、先日の日本記者クラブ主催の党首討論会で、民主党の鳩山代表に、この問題についての基本姿勢をお聞きしました。

 民主党は、「官僚主導の政治」と決別すると言っている。もちろん、あしき「官僚主導の政治」との決別は当然です。天下りは全面禁止すべきです。しかし、日本にはもっと大きな問題があるのではないでしょうか。それは「財界主導の政治」であります。みなさんの暮らしを苦しめているどんな問題をとっても、その根っこをたどると、みんな財界・大企業の横暴にぶつかるではありませんか。派遣労働を横行させた労働法制の規制緩和の大号令をかけたのは、1995年の日経連の報告です。社会保障予算を毎年2200億円ずつ削る号令をかけたのも、「経済財政諮問会議」のメンバーだった日本経団連会長でした。消費税を16%に引き上げようということを言い出したのも、2003年1月の日本経団連の提言が始まりです。日本の農業やコメをつぶしてしまえと、一番強硬に言っているのも財界なんです。このように、みなさんの暮らしを壊すどんな問題でも、その震源地は日本経団連であり、財界ではありませんか。(拍手)

 こうした「財界主導の政治」と正面からたたかえる、財界に正面からモノの言える党が伸びてこそ、暮らしが守れるのではないでしょうか。(拍手)

 私は、この問題を鳩山代表に聞きました。あなたは「官僚主導の政治」と決別するというけれど、「財界主導の政治」はどうですか、決別する意思はありませんか、と聞いたんですけど、定かな答えが返ってきません。ここに民主党の大きな弱点があるということを率直にいわなければなりません。

 企業・団体献金をもらっている党では、財界にモノがいえません。党をつくって87年、企業献金をビタ一文受けとっていない日本共産党を伸ばすことが、「財界中心の政治」のゆがみをただし、暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」をつくる一番の力になるということを訴えたい。どうかよろしくお願いします。(大きな拍手)

アメリカとの関係――前向きの変化は後押し、有害な問題はきびしく反対

 「国民が主人公」の新しい政治といった場合、もう一つの焦点があります。それはアメリカとの関係をどうするかということです。

 いま世界は大きく変わりつつあります。その変化はアメリカにも及んでいます。そういうなかで私たち日本共産党は、アメリカが前向きに変化したところは後押しをする、変化しない有害な問題はきびしく反対をするという態度をとっています。

 前向きに変化したという点では、今年4月にオバマ大統領が、チェコのプラハで、「米国は核兵器のない世界をめざす」という演説をしました。これは勇気のある発言だと思います。ですから私は、大統領に書簡を書き、「あなたの演説を歓迎します。ぜひ核兵器廃絶を主題とした国際交渉を始めてほしい」と要請しました。そうしましたら、先方から返書が返ってきまして、「あなたの情熱をうれしく思います」と書かれていました。

 アメリカに変化をもたらした力は何でしょう。平和を願う世界の世論であります。日本の被爆者の方々が重い病気とたたかいながら、「核兵器のない世界を」と訴えてきた。そのことがとうとうアメリカまで動かしつつあるというのが、いまの世界なのだということに自信をもって、「核兵器のない世界」をごいっしょにめざそうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 核兵器問題にかかわっては、「日米核密約」問題が、選挙戦の大きな争点となりました。ここにその「核密約」のコピーがあります。1960年の日米安保改定時に秘密合意が結ばれていた。米軍が軍艦や航空機で核兵器を持ち込むことについては、日本政府に事前の相談なく自由に持ち込めるという「核密約」が取り交わされていたのです。日本は「非核三原則」が「国是」とされています。それなのに「持ち込み自由」ということが実態だった。半世紀も国民をだましていたのです。

 私は、先日のテレビの党首討論会(23日、テレビ朝日)でこの「核密約」を示して、麻生首相にただしました。「核密約」を公開し、廃棄して、名実ともに「非核の日本」になるべきではありませんか。こうただしたのですが、麻生さんは「核密約」を目の前に示しても「ない」というんです。ここにあるじゃないかといっても、「ない」という(笑い)。これは話になりませんね。

 そこで私は、鳩山代表に、民主党政権になったらどうしますか、調査・公表すべきではないですかとただしました。そうしましたら、鳩山代表は、「(核密約は)あるという蓋然(がいぜん)性が強い。アメリカに行って事実を調べ、国民に説明する。持ち込ませないように交渉する」と言明しました。こういう重要な約束を、テレビ討論でさせたということを、ご報告したいと思います。(大きな拍手)

 ただこれは大仕事です。「持ち込ませず」を実現させるには、この問題を一貫して追及してきた日本共産党を伸ばすことが不可欠です。日本共産党の躍進で、名実ともに「非核の日本」をつくろうではありませんか。(大きな拍手)

 変化しない有害な問題という点では、残念ながら日米関係には、いまのところ変化がありません。米軍基地の再編・強化の動き、自衛隊の海外派兵を拡大する動きなど、日本共産党は、米国の軍事戦略に日本がつき従っていく動きにきっぱり反対し、平和を守るために頑張っていきたいと決意しています。

 憲法9条を守り抜こう、憲法9条を生かした平和外交に転換しようという願いは、どうか党をつくって87年、一筋に反戦平和をつらぬいてきた日本共産党に託してください。(大きな拍手)

「自公には愛想がつきた。民主は不安」――共産党を伸ばすことが一番の焦点

 これが自公政権の退場後に、私たちが大いに取り組みたいと考えている仕事です。「良いものには協力、悪いものには反対、問題点をただす」――これが第一の仕事です。「財界中心」「軍事同盟中心」の政治のゆがみを大本からただし、「国民が主人公」の新しい日本に踏み出す――これが第二の仕事です。こういう仕事をしっかりやる「建設的野党」が伸びてこそ、自公政権が退場した後に、日本の政治をさらに前に進める一番の力になるのではないでしょうか。(拍手)

 いま、圧倒的多数のみなさんは、「自公には愛想がつきた」という気持ちだと思います。同時に、「民主党にも不安がある」というのも多くの方々の声ではないでしょうか。「自公に愛想がつきた、でも民主党には不安」。そうした方々の声をしっかり受け止めることができる党が日本共産党であります。(拍手)

 選挙後は、日本の政治は大激動の時代に入るでしょう。この選挙で日本共産党を伸ばすことが、今後、さまざまなプロセスを経ながらも、「国民が主人公」の新しい日本へと、日本の政治がさらに前進する一番の力になってまいります。みなさん。今度の選挙の焦点が、いよいよはっきりしてきました。日本共産党を伸ばすかどうかが今度の選挙の一番の焦点だということが、論戦を通じてはっきりしてきました。(大きな拍手)

 首都・東京でも、全国どこでも、大激戦、大接戦です。比例代表選挙で日本共産党と書いていただく方を広げに広げ、どうか日本共産党を勝たせてください。国民の暮らしに安心と希望を、平和な日本と世界を、そして日本の進歩的な未来を開こうではありませんか。(歓声、大きな拍手)