2010年7月14日(水)「しんぶん赤旗」

NHK「討論スペシャル」

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は12日夜のNHK「討論スペシャル」に出演し、各党の党首らと、今後の政治のあり方について討論しました。


選挙結果について――重く受け止め、巻き返しへ態勢構築はかりたい

 冒頭で、司会者が選挙結果の受け止めを各党代表にたずねました。

 「想定外の大敗だったが、敗因は消費税と考えるか」と聞かれた民主党の枝野幸男幹事長は「10カ月の政権運営について厳しい叱咤(しった)をいただいた」と述べる一方、「直接の要因は、税制改革についての説明が十分ではなかったということ」と、消費税増税問題が敗因となったことを認めました。

 司会者は自民党の谷垣禎一総裁に、「自民党の比例票は民主党より少なかった。勝利と言えるのか」と質問。谷垣氏は、「与党の過半数獲得阻止という目標は達することができた」「(政権復帰への)道筋はたどり始めた」などと語りました。

 10議席を獲得したみんなの党の渡辺喜美代表は「増税の前にやるべきことがあるという訴えが支持を受けた」「民主党にがっかりしたという人たちが、みんなの党に大量に流れてきた」と述べました。

 日本共産党の志位和夫委員長は次のように述べました。

 志位 (比例代表で)改選4議席を3議席に後退させ、東京(選挙区)で小池晃候補の勝利を勝ち取ることができなかったのは、本当に残念です。まず私は、選挙戦でご支持をいただいた国民のみなさんと、ご支援してくださった方々に心からのお礼を申しあげます。

 ほんとうにたいへんな奮闘をしていただいたんですが、それを議席と得票に結びつけることができなかったのは、私たちの力不足であり、おわびを申しあげます。

 私たちは、今度の選挙結果を重く受け止めております。国政(選挙)で巻き返すための本格的な態勢構築を図るために、党内外の方々のご意見、ご批判に真摯(しんし)に耳を傾けて、私たちの政策の問題、組織の問題について自己検討を徹底的にやって、前途を見いだしていきたいと思っております。

 それから、公約に掲げた消費税の問題、普天間の問題、これらは大いに実現するためにがんばりたいと思っております。

今後の国会運営――民意に反する消費増税、日米合意は撤回を

 衆参の「ねじれ」が生じたなかで、選挙後の国会にどう臨むかがテーマとなりました。

 枝野氏は「政府提出法案でも、野党からの修正要望(に応じること)で賛同いただけることがあれば、ていねいな努力を法案ごとにしていきたい」「この間、丁寧さに欠けた部分は反省する」などと語りました。

 谷垣氏は「与党から真摯な提案があれば、十分協力する」と述べました。

 志位氏は、野党としての今後のあり方を聞かれ、こう述べました。

 志位 菅さんは(参院選で示された)民意を重く受け止めるとおっしゃった。ですから、民意に反する方針は撤回するという姿勢をとるべきだと思うんです。

 とくに(民主党は)消費税の問題は、敗因の一つにあげたわけですね。世論調査でも増税反対が多数を占めているわけですから、やはりこの方針は、見直して撤回する。

 それから普天間問題も、(県内移設の)日米合意の白紙撤回を求める決議が、沖縄の県議会で全会一致であがっているわけですね。沖縄の県民の民意に真っ向から反しているものですから、日米合意は撤回して、無条件撤去を求めるというところに変わっていく必要があると思います。

 社民党の福島瑞穂党首は、国会議員の比例定数削減について、「反対の立場での共同戦線を張りたい」と発言しました。

消費税増税――「増税先にありき」の与野党協議には絶対にくみしない

 テーマは選挙の争点となった消費税増税問題に移りました。菅直人首相が選挙後、「議論(を提起したこと)そのものは間違っていなかった」との認識を示したことを受け、司会者が、「今年度中に結論を出すという方向で今後も話をすすめていくのか」と問いました。

 枝野氏は、「あくまでも、議論を始めさせてほしいというのが首相の訴えだった」と弁明。「それに対して厳しい意見があるなかで、遠い将来を考えれば議論が必要なのは間違いない。期限にとらわれず、国民に趣旨を理解してもらうよう、党内的にも議論を深めて、時間をかけて丁寧にすすめる必要がある」と述べました。

 谷垣氏は、「消費税の議論が封印されるのは、日本の将来にとって非常にまずい」と述べ、「民主党が真摯に案をまとめてくれば、いつでも協力したい」と増税協議に応じる考えを示しました。

 司会者から、選挙結果にかかわらず、消費税を含む税制の「抜本改革」の議論をある時点で呼びかけるのかをあらためて問われた枝野氏は、「各党の意見を踏まえながら、どういう形で協議の場に臨むのかを丁寧にやっていかなければならない」とし、「共通の土俵で議論ができる土壌づくりを党内外ですすめていきたい」と述べました。

 また「中長期的な税と社会保障のあり方の議論をしておかないと、すぐにギリシャのようになるわけではないと思うが、そうならないように早くから議論することが必要だ」などと述べました。

 志位氏は、司会者から「参院選で国民は消費税増税にノーの審判を下したと考えていますか」と問われ、次のように述べました。

 志位 私は、消費税の増税に対しては、国民はノーの審判を下した、とくに、いま(消費税を)上げることに対してはダメという審判が下ったと思っています。

 消費税は、もともと所得の少ない方に重くのしかかり、大企業は1円も負担しないという不公平税制ですから、私たちはどんな場合でも増税には反対ですけれども、とくに今度の選挙で訴えたのは、いま出されている消費税の増税というのは特別にスジが悪いということなんです。

 すなわち、法人税の減税とワンセットで押し出されている。こうなると、法人税減税による税収減で、平年度ベースで9兆円の穴があく。5%消費税を上げたとしても、新しい税収で入ってくるのは11兆円ですから、ほとんど穴埋めに消えてしまう。

 そういうやり方では、福祉の財源にもならないし、財政再建にもならない。こういうやり方自体を、私たちは絶対に認めるわけにいかない、ということをいっております。

 いま議論された(与野党の)協議会も、「増税先にありき」になっていますから、そういうやり方には、私たちは絶対にくみするわけにはいきません。

財源問題――聖域を設けずに歳入、歳出の改革をはかれ

 来年度の予算編成がテーマとなり、社会保障財源と財政再建が両立するかが各党に問われました。枝野氏は、「無駄の削減や優先順位の低いもののカットで財源を生み出したい」などと述べました。谷垣氏は「どういう分野にどこまで切り込めるか。(社会保障を)相当削らないとできない」と述べ、公明党の山口那津男代表も「かなり思い切った歳出削減をしないとできない」述べました。

 これに対して志位氏は次のように述べました。

 志位 (民主党政権は)無駄の削減というんですけれど、聖域を設けたらまずいと思うんです。私たちは、年間5兆円の軍事費に縮減のメスを入れるべきだといってきました。

 とくに米軍への「思いやり予算」、グアムに基地をつくる予算、これは民主党は野党時代には反対されてきたわけです。ですから、そういうところは大胆に縮減のメスを入れていくべきだと思います。

 もう一点は、大企業や大資産家に対する行き過ぎた減税措置をただすことです。たとえば、証券優遇税制といって、株の配当あるいは売買でもうけたお金にかかる税金は10%。本則は20%ですから本則に直ちに戻す。そして富裕層は30%に引き上げていく。そういう措置が必要です。

 (首相から)大企業の法人税の引き下げを先行してやっていくという話が出ていますが、もってのほかです。いまの大企業の法人税は表面税率で40%といわれますが、実質的な負担はもっと低いですから、負担能力に応じて、応分の負担を求めるという方向で、聖域を設けずに歳入、歳出の改革をすすめるべきだと思います。

普天間基地――民主政権に強行する資格なし、無条件撤去で交渉を

 普天間基地の「移設」問題に話が移り、司会者が、新基地建設を明記した日米合意にもとづき8月中に「移設」先と工法を決めることになっているが、地元の合意がなくてもすすめるのかと問いました。

 枝野氏は、8月末までに専門家としての見方が示されるが、これを押し付けるやり方は「できればとりたくない」と述べながら、「国家間の合意も大事にしなければならない」と語りました。谷垣氏は「沖縄との信頼関係を得ることは容易でない」と語りました。志位氏は次のように発言しました。

 志位 民主党政権は、県内移設の日米合意を結んだわけですが、選挙で、堂々と“県内移設をやるんだ”という候補者を立てることすらできなかったわけです。すなわち、沖縄では不戦敗に終わったわけです。その一事をとってみても、地元の合意は得られないと自分で認めているようなものです。この方針を強行する資格は(民主党政権には)ないと思います。

 私は、選挙期間中にも沖縄にいきまして、普天間基地の見える高台で、宜野湾市民のみなさんと話す機会があったんです。どなたも、「こんな苦しみは、沖縄はもとより、本土にも移してほしくない、アメリカに持って帰ってほしい」と、無条件撤去を強く求めておられました。普天間基地を抱える宜野湾市民の75%が無条件撤去を求めている。苦しみというのは移すものではなくて、取り除くのが政治の責任です。

 私は、無条件撤去で米国と交渉するという立場に立たないと、絶対に問題は解決しない、どこかに移すというやり方では解決しない、と思います。

国民の声にどうこたえる――閉塞状況を打開する根本の道は

 最後に、視聴者からの意見が7300通寄せられたことが紹介され、国民の声にどう応えていくかが、各党に問われました。志位氏は次のように述べました。

 志位 いま、日本の政治と社会は、非常に深い閉塞(へいそく)状況に覆われていると思うんです。国民のみなさんは、なんとかこれを打開してほしいと願っていると思うんですけれども、その根っこになにがあるのかと考えますと、さきほど議論した普天間問題は、アメリカの論理、海兵隊は抑止力だという論理に屈したところから、出口が見えなくなっている。

 それから消費税(増税)の問題も、どこが震源地かといいますと、4月に日本経団連が出した増税プランが一つの震源地になっています。

 ですから、外交はアメリカ、内政は財界、このいいなり政治から脱却して、憲法に書いてあるとおりに、「国民が主人公」の日本に転換していく。そうしてこそ、いまの閉塞状況が打開できると私は考えています。