2010年11月2日(火)「しんぶん赤旗」

領土問題の公正な解決に反する

ロ大統領の千島訪問に抗議

志位委員長が談話


写真

(写真)記者会見する志位和夫委員長=1日、国会内

 日本共産党の志位和夫委員長は1日、国会内で記者会見し、ロシアのメドベージェフ大統領が「北方領土」の国後(くなしり)島を訪問したことについて、談話(別項)を発表し、「第2次世界大戦の終結時に(日本から)不当なやり方で千島(ちしま)列島、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)を奪った行為について、最高指導者が国後島を訪問することでまさに今後も不当に占領し続けるという意思を示したものとして厳しく抗議したい」と表明しました。

 志位氏は、1855年の日魯通好条約と1875年の樺太(からふと)・千島交換条約で平和的に国境が確定され、国後・択捉(えとろふ)から北千島の占守(しゅむしゅ)にいたるまでの南北千島全体が日本の領土となったと述べました。

 ところが、旧ソ連が第2次大戦終結時に「領土不拡大」の大原則を踏みにじり、南北千島列島と北海道の一部である歯舞・色丹を占領したために問題が引き起こされていると指摘。戦後処理の不公正を正す立場に立って、「全千島の返還を求める交渉を堂々と行ってこそ、この問題の解決の道は開ける」と強調しました。

 記者団から、民主党政権の対応について問われ、「自民党政権と同じように『4島は千島ではないから返すべきだ』という論理で対応して現状の固定化を続けるのか、領土不拡大という原点まで戻って本腰を入れた対応をするのか、これから鋭く問われてくる」と述べました。


談話

ロシア大統領の千島訪問について

志位 和夫

 一、ロシア連邦のメドベージェフ大統領は1日、ソ連時代を含め同国最高指導者としては初めて、日本の歴史的領土である千島列島の国後島を訪問した。

 今回の訪問は、日本国民にとっては、大統領のたんなる「国内視察」ではない。それは、ロシアの最高権力者が、同国に不当に併合された日本の領土である千島を、「ロシアにとってきわめて重要な地域」としてこれからも占領しつづけ、領有を固定化しようとする新たな意思表示であり、領土問題の公正な解決に反するものであって、わが党はきびしく抗議する。

 一、ロシアとの領土問題は、第2次世界大戦の終結時に、ソ連が、「領土不拡大」という戦後処理の大原則を踏みにじって、日本の歴史的領土である千島列島の獲得を企て、対日参戦の条件としてアメリカ、イギリスなどにそれを認めさせるとともに、講和条約の締結も待たずに、千島列島を自国の領土に一方的に編入したことによって起こったものである。そのさいソ連は、北海道の一部である歯舞群島、色丹島までも編入したのであった。

 この戦後処理の不公正を正すところに、ロシアとの領土問題解決の根本がある。

 わが党は、この立場に立って、1969年に千島政策を発表して以来、全千島列島と歯舞群島、色丹島の返還を求めてきた。

 一、日本政府の対ロシア領土交渉が、1956年の日ソ共同宣言以来、半世紀を超える努力にもかかわらず、不毛な結果に終わっているのは、この根本問題を避けてきたところに最大の根源がある。政府は、問題をサンフランシスコ講和条約の枠内で解決しようとして、「四島は千島に属さないから返せ」という主張に頼っている。しかし、この主張が国際的に通用する道理を持たないことは、サンフランシスコ会議における日本政府代表(吉田全権)とアメリカ政府代表(ダレス全権)の発言およびこの条約の批准国会における政府答弁を見ても、明らかである。

 一、わが党は、歴代の日本政府にたいして、日ロ(日ソ)領土問題の解決のためには、千島放棄条項を不動の前提とせず、第2次世界大戦の戦後処理の不公正を正すという立場に立って、対ロ(対ソ)領土交渉をおこなうことを提起してきた。

 ロシアが現状固定化をめざして新たな強硬措置に出ようとしてきた今日、日本政府が、半世紀の領土交渉の総括を踏まえ、歴史的事実と国際的道理に立った本格的な領土交渉に踏み出すことを、強く要請するものである。