2011年5月10日(火)「しんぶん赤旗」

志位・市田氏 原発被害の福島訪問

全面的賠償へ全力

田畑は 生活は 健康は……住民、不安切々と訴え


 「原発事故被害者が希望と展望を持てるよう、対策を政府に強く求めていきます」。日本共産党の志位和夫委員長、市田忠義書記局長らが9日、福島県内でおこなった住民との懇談で表明した決意に、参加者は何度もうなずき、大きな拍手を送りました。


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(写真)「計画的避難地域」の山木屋地域の住民の要望を聞く志位和夫委員長(後ろ向き右)、市田忠義書記局長(同左)=9日、福島県川俣町

川俣町

 福島第1原発事故による「計画的避難区域」に指定された川俣町山木屋地区(約1200人)。美しい自然のなかでの穏やかな暮らしが事故によって一変しました。志位氏らが懇談のために訪れた公民館には、住民が真剣な顔つきで駆けつけました。

 懇談の冒頭、志位氏は「原発事故は東電と国による人災であり、全面的な賠償をすべきです。みなさんにはすべての要求を出していただきたい。私たちは実行を迫っていきます」と表明。(1)区域外に避難した住民の区域内の企業への通勤や農場の管理について柔軟な対応をする(2)「いつ帰れるのか」の見通しを国がきちんと示す(3)事故による収入減をはじめあらゆる損害を全面的に賠償させるとともに、すみやかに当面の生活のための仮払いをする―を実現するため、全力をあげるとのべました。

先の見通しない

 集まった50人を超える住民からは、あふれるように切実な要求が出され、志位氏らは一言ももらさぬようメモを取りながら聞き入ります。

 ▽山も田んぼも、国が買い上げてきれいにして返してほしい。農協の共済制度は放射能被害が対象にならないので、国に払わせてほしい。(コメ、葉タバコ農家の男性)

 ▽事故以来、牛の乳を毎日搾って捨てている。収入はゼロ。3月の生活費は組合から借り入れたが、この先はまたゼロだ。先々のことまで賠償してほしい。(酪農家の男性)

 ▽先の見通しがまったくない。希望がないことが最大の不安です。(中年の男性)

 ▽他の地域では住民が避難したところで窃盗も起きている。盗難された場合も東電の責任で賠償してほしい。(農家の男性)

 ▽母が要介護度4でショートステイを利用していたが、避難先で利用が長期になると費用が3倍にもなる。小さな商売をしているが、避難で無職になってしまうと払い切れない。(商店経営の女性)

 ▽小さい子や若い人たちが将来もしがんが発症したら、因果関係が認められるのか。(50代の女性)

 ▽精神的な被害に対する慰謝料も要求したい。(高齢の男性)

「線引き」させない

 要望を受けて志位氏は、当座の個人への賠償金の仮払いだけでなく、農業、漁業、商工業などを営む人への仮払いをただちにおこなうこと、これから生まれる被害も含め全面的に賠償させること、絶対に国に対象を「線引き」させてはならないことを強調。「これだけきれいな自然を見ていると、私も胸が詰まる思いです。みなさんができるだけ早く戻れるように、国は展望、見通しを示すべきです。ご一緒に力を合わせて頑張りましょう」と重ねて語ると大きな拍手が起こりました。

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(写真)避難所で暮らす人たちと懇談、激励する志位和夫委員長(中央右)、小池晃政策委員長(同左)=9日、福島県南相馬市

原発 もうなくしてほしい

南相馬市

 この日、志位、市田両氏らは、南相馬市の原町第一小学校も訪れ、避難生活を送る住民に「ご自宅は大丈夫でしたか?」などと声をかけ、要望を聞きました。

 志位氏は、将棋をさしていた男性2人とひざを突き合わせて懇談。福島第1原発の20キロ圏内から避難している男性(65)は「国民には何の責任もない。こんな被害はせめて福島だけで抑えて、ここから復活させないと。そのためにみなさんの力が必要です」。もう一人の男性(70)は「事故は早くどうにかして。原発はもうなくしてほしい」と訴えました。

 志位氏は「原発は段階的に撤退するプログラムをつくってなくしていかないといけませんね」と語り、両手で男性らの手をしっかりと握りました。

 同市小高区から妻とともに避難している農家の中年の男性は、志位氏に「去年コンバイン買ったばかりだよ。800万円。今後の生活が成り立たない。何年間補償してくれるのか…」と、吐き出すように不安を口にしました。

 志位氏が「東電には1回で終わりでなく、何年先でも賠償させなければいけません」と語ると、男性は「道筋をつけてください。よろしくお願いします」と訴えました。

 志位氏らは避難所スタッフを務める市内の病院の若い看護師らを激励。「原発からの距離20キロ、30キロなどで分断することなく、一体で賠償させなくてはいけませんね」と声をかけると、看護師らは深くうなずいていました。