2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」

東日本大震災

復興への希望もてる施策、原発からの撤退を

志位委員長が首相に提言


 日本共産党の志位和夫委員長は17日、首相官邸で菅直人首相と会談し、「復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる――大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)」を渡し、要請しました。政府から福山哲郎官房副長官、日本共産党から市田忠義書記局長と穀田恵二国対委員長が同席しました。(提言全文)


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(写真)菅直人首相(右)と会談し、要請する志位和夫委員長=17日、首相官邸

 今回の提言は、日本共産党の被災地訪問(6〜9日)などでつかんだ現時点での被災者の実態と要望を踏まえたもの。志位氏が「ぜひ全体を政府の救援・復旧・復興に役立ててほしい」と語ると、首相は「生かしていきたい」と答えました。

被災者の生活基盤の回復を

 「提言」の第1章「被災者の生活基盤の回復を国の責任で」にかかわって、志位氏は「国が“復興への希望”が見えるような政治的メッセージを出し、具体的施策をとることを急ぐ必要がある」と強調。とりわけ、多くの漁業者、農業者、中小企業、商工業者から、債務問題で「せめてゼロからのスタートを」が共通の声として出され、国の責任で「凍結・減免」をはかることを要求しました。

 また、産業基盤の回復については、壊された漁船・養殖施設への100%公的支援、国がのりだして破壊された農地を修復することなど具体的な施策を示して、「国の責任で、被災者が自分の力で再出発できる基盤を回復すべきだ」と求めました。

 住宅問題では、被災者生活再建支援法の上限引き上げと適用範囲の拡大とともに、多様な形態での公営住宅の建設を要求。「以上のようなことを盛り込んだ第2次補正予算を今国会に出し、可決させることが必要だ」と求めました。

 菅首相は、住宅ローンについて「従来の枠組みでは対応できないのはたしかだ」とのべるとともに、「債務凍結」についての日本共産党の提案について「内閣としても議論して検討の材料にさせていただく」と回答。産業基盤の回復については「復興の議論の中で進めていきたい」との考えを示しました。

 志位氏は、「いま必要なのは被災者が“復興への希望″が見えるような政治的メッセージと具体的施策を示すことだ」と重ねて求めました。首相は「そうしたメッセージが必要だと思うが、出すからには具体的なイメージがなければならない」とのべ、復興の議論のなかで検討するとの立場を繰り返しました。

原発災害からの救援、復旧、復興を

 志位氏は、「提言」の第2章「原発災害からの救援、復旧・復興に果たすべき国の責任」にかかわって、「『将来の見通しがたたないのが何よりつらい』というのが現地の声だ。原発危機収束と帰郷の展望を政府の責任で示すべきだ。東電に収束の『工程表』を『丸投げ』して、政府が追認するというのでなく、政府としてあらゆるデータを直接掌握し、裏付けと根拠を示し、責任をもって見通しを明らかにすべきだ」と強調しました。さらに、原発被害への全面賠償と速やかな仮払い実施、避難を強いられている住民の要望を踏まえた柔軟な対応を求めました。

 菅首相は「いろいろなことがいまになってわかってきた。東電の『工程表』の改訂版と政府としての『工程表』を明らかにしたい」と述べるにとどまりました。避難を強いられている住民の要望を踏まえた柔軟な対応をという提起に、政府側から「努力したい」との回答がありました。

「原発ゼロ」の期限を切ったプログラムを

 志位氏は、「提言」の第3章「原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成を」にかかわって、福島原発事故は(1)原発の技術が本質的に未完成で危険なものであること(2)それを世界有数の地震・津波国に集中立地することの危険性(3)にもかかわらず歴代政権が「安全神話」にしがみついてきたことの重大性を、「万人の前に事実をもって明らかにした」と指摘。その上で、原発からの撤退を決断し、原発ゼロを期限を決めて実行するプログラムを政府として作成することを要求しました。

 菅首相は「これまでは原子力と化石燃料の二つが柱だったが、今後は自然エネルギーと省エネを加え(エネルギー政策の)4本柱としたい」、「原子力については安全性を高めるのがいまの政権のスタンスだ」と述べるにとどまりました。同時に、「使用済み核燃料が原発のプールにあんなに蓄積していることは知らなかったが問題だ。再処理サイクルが機能しない状況になっている。それも含めてエネルギー基本計画を白紙から見直したい」とのべました。

 会談後の記者会見で、志位氏は「被災地は復興に向けた希望を切望している。(政府が2次補正予算提出を予定している)8月では遅い。今回の『提言』の内容が一刻も早く実現するよう、引き続き強く求めていきたい」と表明しました。