2011年8月5日(金)「しんぶん赤旗」

「保安院」は解体し、真に独立した規制機関を

「原発ゼロ」を実行する機関として位置づけよ

志位委員長が見解発表


 日本共産党の志位和夫委員長は4日、国会内で記者会見し、「『保安院』は解体し、真に独立した規制機関を――『原発ゼロ』を実行する機関として位置づけよ」と題する、次の見解を発表しました。


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(写真)記者会見する志位和夫委員長=4日、国会内

 一、政府は、原子力安全・保安院を経済産業省から分離し、環境省の外局などに「原子力安全庁」を設置する方向であることが伝えられている。原子力の推進機関から独立した規制機関のすみやかな確立は、わが党がかねてから求めてきたことだが、問題はどういう基本的立場でそれをすすめるかにある。

 一、第一に、現在の保安院を、経済産業省から他の省に付け替えればいいという発想では、意味がない。

 原子力安全・保安院は、規制機関としての責任を果たすどころか、「やらせ問題」に深く関与するなど、電力会社と一体となって「安全神話」を垂れ流し、国民を欺いてきた震源地である。このような堕落した機関は、原子力行政にたずさわる資格が根本的にない。こうした「保安院」を組織的にも人的にも引き継ぐようでは、たとえ経済産業省から分離しても、まともな規制機関には到底なりえない。

 わが党は、現在の原子力安全・保安院は解体し、推進機関からも電力会社からも完全に独立し、「安全神話」と決別した組織と体制を新たにつくることを求める。そうした目的にふさわしい専門家、技術者の力を新たに総結集し、強力な権限と体制をあたえることが必要である。

 一、第二に、新たにつくる規制機関は、「原発ゼロの日本」を実行するという方向にそった仕事をさせる機関として位置づけるべきである。

 すなわち、(1)日本のすべての原発を運転停止させるまでの間、事故の危険を最小限のものとするための、考えうるかぎり、可能な限りの安全対策をとる。(2)原発の運転停止後も、20年程度かかるといわれる廃炉にいたる過程で放射能が外部に流出しないよう、責任をもった対応をおこなう。(3)「使用済み核燃料」の処理技術を確立し、処理作業が終了するまで、長い時間、核廃棄物を環境から厳重に隔離し、監視する。

 わが党は、新たにつくる規制機関を、以上の仕事をになう機関――いわば“原発撤退機関”として位置づけることを求める。


保安院問題

志位委員長の会見

(詳報)

 日本共産党の志位和夫委員長は4日の会見で、原子力安全・保安院をめぐる問題に関連して質問を受け、次のように述べました。

 一、(海江田万里経済産業相が、保安院院長など経産省の幹部3人の更迭方針を表明したことについて)それぞれ責任はあると思いますが、これは組織ぐるみの問題です。関係機関のトップが更迭されたからといって問題解決にはならない。保安院全体の解体が必要です。トップをちょっと代えただけで責任をとったという形にして、あとはちゃんとした組織になったかのように扱い、“組織いじり”ですますということでは問題は解決しません。

 一、(保安院を環境省などに移すという考えについて)環境省もこれまで原発を推進してきました。原子力を、二酸化炭素を減らすクリーンエネルギーと位置付け、原発への置き換えが大事だといってきた省だから、ここにくっつけたら規制が進むというのは合理性がない。今のものをくっつけるのではなく、解体して新たな体制をつくらないといけません。

 保安院には、原子力行政に携わる資格がない。重大事故を引き起こし、その収束もできないでいる。「やらせ」にまで関与している。保安院は解体した上で、「安全神話」と決別した研究者、専門家を総結集して新しい組織を一からつくらない限り、どこにくっつけようと問題は何も解決しません。

 一、(菅直人首相が発表したエネルギー政策の中間整理案について)原子力発電について結局、「依存度を低減する」ということにとどまりました。

 「依存度の低減」ですから、絶対的に減らすかどうかもわかりません。工程表をみても、長期的にも原子力発電は続けるということが明記されています。首相は「将来は原発がない社会を実現する」といいましたが、結局、出てきたものは、未来の先々まで原発に依存するというものでした。あれだけの深刻な被害を経験したわけだから、「原発ゼロ」の政治的決断が必要です。規制機関についても、その仕事の中に位置づけることが求められています。