2011年10月21日(金)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が20日、党国会議員団総会でおこなったあいさつは次の通りです。


写真

(写真)あいさつする志位和夫委員長=20日、衆院第2議員会館

 みなさん、連日の奮闘ご苦労さまです。臨時国会の開会にあたって、この国会にのぞむ基本姿勢についてのべたいと思います。

大震災・原発災害からの復興――「第3次提言」の実現のために全力を

 大震災、原発事故から7カ月余りが経過しました。住民の方々が被災地に戻り、住み続けていける地域として復興できるかどうか、大きな岐路にあります。大震災からの復興、原発問題にどう対応するかは、この臨時国会においても引き続き最大の課題だということを、まずお互いに腹にすえてしっかり頑張りたいと思います。

 被災者の苦しみ、願いにこたえた、国会議員団の“全員プレー”の奮闘によって、この間、一連の政治を動かす成果もつくられてきました。

 「二重ローン」の問題については、私たちは一貫して、すべての被災事業者を対象にした支援の制度にするべきだと主張しつづけてきましたけれども、そういう方向に向けての前進の流れが、切り開かれつつあります。

 被災した医療機関について、私たちは、選別せず、すべての医療機関の再建を支援すべきだと強く主張してきましたが、政府も前向きの答弁をせざるを得なくなり、岩手県の三つの県立病院については再建の方向が明らかになっていることも重要であります。

 放射能汚染の除染の問題で、私たちは、国が勝手に放射線量で「線引き」をして、責任逃れをすることはあってはならないと、強く主張し続けてきましたけれども、1ミリシーベルト以上はすべて国が責任を負うということを明確にさせたことも、大事な成果だったことを確認できると思います。

 もちろん、復興への課題は山積みです。日本共産党は、10月7日におこなわれた党首会談で、「大震災・原発事故にあたっての第3次提言」をまとめて、政府に提起をしました。この「第3次提言」は現時点での被災者の方々の切実な要求を集大成した内容になっていますから、この実現のために、国会議員団が被災地のみなさん、全国のみなさんと共同して、総力をあげて頑張ろうではないかということを、まず訴えたいと思います。(拍手)

政府の「復興増税」――庶民増税は「復興のため」でなく「大企業減税のため」

 この問題での最大の焦点は、復興財源の問題です。

 政府がいま、進めようとしている「復興増税」なるものの正体は、わが党の国会論戦ですっかり明らかになりました。結局、10年間で、サラリーマンや自営業者などに対しては、所得税などの増税で9兆円もの増税を押し付ける。一方、大企業に対しては法人税の減税で、10年間で計算しますと11兆円もの減税になる。こうした「逆立ち」した仕掛けだということがはっきりしました。「みんなで分かち合う」と言いながら、「みんな」の中に財界は入っていない。看板に偽りありだと言わなければなりません。

 しかも、政府の方針でいくと、増減税をあわせますと、11兆円引く9兆円は2兆円でしょう。つまり、10年間という単位でみたら、2兆円の減税という話になるわけです。1円も復興財源は出てこないのです。借金だけが増えるというしかけになっている。なんのことはない。庶民に対する増税というのは「復興財源」のためではない。大企業減税のためだというのが正体ではありませんか。こんな二重、三重に許し難い方針は断固反対という立場で頑張りたい。(拍手)

財源問題での二つの提案――本気で復興・賠償・除染にとりくむために

 「第3次提言」で、わが党は、財源問題で二つの提案をいたしました。財源問題を考えるときに、一般の復興のための財源と、原発災害対策の財源は、立て分けて考える必要があります。性格も違うし、責任も違うわけですから。これは立て分けてそれぞれ考える必要があるというのが、私たちの提案です。

 第一に、一般の復興のための財源は、歳出と歳入の抜本的な見直しによってまかなう。とりわけ、大企業と大資産家への減税のばらまき、いま進められている計画を中止すれば、10年間で17兆円の財源がつくれる。庶民増税なしに復興財源はつくれるというのが私たちの立場であります。

 第二に、原発災害対策の財源については、私たちは新しい提案をおこないました。すなわち電力業界が、使用済み核燃料の再処理と核燃料サイクル推進などのために積み立てているお金がある。すでに4・8兆円が積み立てられており、19兆円まで積み立てる予定となっています。この19兆円を、国が管理する基金にそっくり移して、「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設する。そのさい、19兆円では足りませんから、私たちが「原発利益共同体」と呼んでいる原発で大もうけをした大企業集団にも基金への拠出を求める。こうして、19兆円プラスアルファのお金をしっかり作って、賠償と除染をしっかりやろうというのが日本共産党の提案であります。

 この提案について、先日の党首会談で提起したところ、首相も否定するわけにはいかなくなりまして、「原発関係のお金は、エネルギー計画を見直す中で洗い直し、できるだけ除染や賠償にまわす方向で考えたい」ということをのべました。これはメディアも注目して報じました。

 率直にいって、政府は、原発災害対策のための財源については、まったく何の方策も持っていないのです。ですから今度の第3次補正予算案をみても除染の予算はたった2000億円でしょう。やる気を根本から疑うような額しか出ておりません。来年度予算案を含めても1・2兆円しか除染費用にあてないという。この前の党首会談でも「あまりに少ないじゃないか」と話しました。首相も「自分も少ないと思う」。こういう調子であるわけです。相手はまったく財源については方策を持っていない。ならば、私たちの案を採用せよと迫っていきたい。本気で賠償・除染に責任をもってとりくむ気があるならば、私たちの案を採用し、実行に移せということを、大いに求めていこうではありませんか。(拍手)

アメリカ・財界「使い走り」内閣――尻をたたかれ、いっさんに走り出す

 同時に、日本の進路を左右する大問題が、いま国政上の大問題となってきました。

 私たちは、野田内閣が発足したさいに、この内閣は「アメリカ・財界直結」内閣だと特徴づけましたが、その後の経過をみますと、その通りになったという印象を強くします。もっといえば、アメリカと財界の顔色をうかがい、その一言一句を忠実に実行する、アメリカ・財界「使い走り」内閣というべき姿が、はっきり明るみに出たというのが、この間の経過ではないでしょうか。

 首相は、9月の日米首脳会談で、オバマ大統領に、「普天間問題とTPP(環太平洋連携協定)で結果を出せ」といわれました。そういう形で尻をたたかれたら、いっさんに走り出しました。それらが日本にとって、あるいは沖縄にとって、どういう意味をもつのか、どういう問題を引き起こすのか、それについての吟味もなければ、国民に対する説明もなしに、やみくもな暴走をはじめました。

TPPへの暴走ストップ――亡国のたくらみを共同の力で食い止めよう

 TPPについていいますと、11月にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれる。このAPECでアメリカに何としても「お土産」を持っていきたい。「日本も参加します」という「お土産」を持っていきたい。この一心で暴走を始めています。

 先日、私たちは、「TPPへの暴走を許さない国民的な共同をよびかけます」というアピールを発表し、この企てが、「食と農」に壊滅的打撃を与えること、破たんした「アメリカ型のルール」を押し付け、暮らしと経済のあらゆる分野に打撃をおよぼすこと、地域経済・雇用・内需に大打撃となる日本経済破壊の動きであることなどを、くわしく明らかにし、「食料主権、経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展を」というわが党の対案も明示し、TPP参加反対の一点での共同をよびかけました。

 10月26日と11月8日に、JA全中のみなさんなどをはじめ、幅広い方々を結集して、TPPへの暴走阻止の大集会がもたれます。私たちも、これに大いに参加し、成功のために貢献したいと思います。同時に、この動きに呼応して、党として全国津々浦々でTPPへの暴走ストップの緊急のいっせい宣伝行動、緊急集会などをおこなうことを、私は、この場を借りて訴えたいと思います。この亡国の動きを何としても食い止める、そのための決意を固めあおうではありませんか。(拍手)

普天間基地問題――沖縄県民の総意に連帯した、国民的たたかいを

 沖縄の普天間基地の辺野古移設問題をめぐっても、非常に重大な動きが、この間、起こっています。政府が、環境アセスメントの報告書を年内に提出するという動きを開始したのです。移設に向けた手続きを、やみくもに進めようというものです。毎日のように閣僚などが沖縄に押しかけて、「日米合意」の履行を迫り、恫喝(どうかつ)、脅しを県民に対して加えている。沖縄県民の怒りが広がっています。

 沖縄タイムスの社説は「民主主義が泣いている」と書きました。琉球新報の社説は「大臣は米国のご用聞きか」と批判しています。沖縄県民の「県内移設反対」の総意はもはや動くことはありません。これが目に入らないのか。目に入っていないわけがありません。これが県民の総意であることを知りながら、それを無視して基地を押し付けようとする。これはまさに、民主主義破壊の暴挙以外の何ものでもありません。(拍手)

 だいたい、なぜ環境アセスの報告書を年内に提出するのか。これも、実は、アメリカの都合にあわせてのものなのです。米国議会では海兵隊の移転問題での審議が12月にヤマ場になるといわれています。それにあわせて報告書を出す。要するにアメリカの顔色をうかがっての動きなのです。

 ひたすらアメリカの顔色をうかがい、沖縄県民の総意を土足で踏みつけにして恥じない。いったいどこの国の政府か。沖縄県民の総意に連帯して、この暴挙を食い止め、「基地のない沖縄」、「基地のない日本」をめざす国民的なたたかいを新たな決意で起こそうではありませんか。(拍手)

財界の「使い走り」――消費税増税と社会保障大改悪の「一体改悪」を許すな

 財界の「使い走り」という点でも、野田内閣の姿はあきれるばかりであります。安住財務大臣は、日本経団連との懇談会でこうあいさつしました。「社会保障と税の一体改革」に関して、「消費税(の引き上げ)を正直に国民にお願いするしか道はない。来年には必ず消費税の法案を(国会に)必ず出す」。「必ず」という言葉を繰り返し使って財界に誓約したとの報道です。

 しかし、「一体改革」なるものの正体はすっかり底がわれました。

 とくに、年金支給開始年齢を68歳〜70歳に引き上げるという年金大改悪の動きに対して、「国家的詐欺だ」との怨嗟(えんさ)の声が国民的に噴出しています。いまでさえ世界一高い医療費の窓口負担に定額負担を上乗せするという医療大改悪の動きに対しても、強い批判の声が起こっています。これらの動きは、あの自公政権でさえ手が付けられなかった。そういう暴挙を、いまやろうとしている。

 「一体改革」の名で、消費税増税と社会保障の大改悪という「一体改悪」を押し付ける動きに、国民的反撃をもってこたえる大闘争を起こすことを呼びかけたい。それに貢献する論戦に大いに取り組む決意を固め合いたいと思います。(拍手)

選挙制度の各党協議――比例代表中心の制度への抜本改革を強く求める

 民主主義をめぐる大問題もこの国会での大きな焦点となります。

 選挙制度に関する各党協議会が、昨日、開始されました。わが党は、この協議会に参加するにあたって、現行の小選挙区比例代表並立制の枠内での「1票の格差」の是正という小手先の対応ではなくて、選挙制度そのものを抜本的に改革する――民意を最も正確に反映する比例代表中心の制度に抜本的に改革すべきだという立場でのぞみます。

 小選挙区制の反民主主義的な害悪は、導入から17年を経てすでに明白です。大政党有利に民意をゆがめる、たくさんの死票をつくりだす、そして政治の劣化がこの制度のもとで進行したことは、誰の目にも明らかであります。

 これだけの害悪が明らかになったにもかかわらず、比例代表を削減して小選挙区中心の制度をもっとひどくしようという動きもありますが、これは論外であり、私たちは絶対反対という立場で頑張りぬきます。(拍手)

 この間の各党の議論を見ていますと、先日の書記局長・幹事長のテレビ討論会でも、民主、自民以外の諸党から、「比例中心の制度に変えるべきだ」という声が、起こっています。私たちは、比例代表中心の制度への改革を強く訴え、他党との可能な協力もはかりたいと考えています。

「貧困と格差をなくせ」――世界の動きに連帯したたたかいを日本でも

 最後に、世界に目を転じますと、たいへん大きな希望ある動きが起こっています。アメリカの「ウォール街行動」に端を発した貧困と格差をなくせという運動が、世界中に広がっています。「1%の大金持ちが支配し、99%が犠牲となる社会でいいのか」、「私たちは99%だ」。これがスローガンとなり、世界中の合言葉になりつつある。

 2008年の秋のリーマン・ショックに始まった世界経済危機にさいして、「先進国」がとった対応は、金融的対策が中心で、大銀行は息を吹き返し、大金持ちは巨額の富をさらに増やしたが、実体経済、庶民の暮らしの困難はひどくなる一方でした。失業と貧困と格差が広がり、それへの怒りが噴き出しているのです。日本でも、世界的な労働者・若者の運動に連帯したたたかいを、大いに起こそうではありませんか。

 日本経済にかかわって、リーマン・ショックの前の数字と、直近の数字を比較してみました。そうしますと、大企業の内部留保をみると、リーマン・ショック前のピークは255兆円(2008年7〜9月期)でありました。リーマン・ショックの後に、内部留保は一時的に減少しますが、すぐに再び増加に転じ、直近では257兆円(2011年4〜6月期)と、史上最高にまでため込み金を積み増しているのです。法人税減税とともに、証券優遇税制が延長され、株の取引にかかる税金はわずか10%と、アメリカも驚く大金持ち優遇をつづけている。こうして、経済危機のもとでも、大企業はますます肥え太り、富めるものはますます富んでいる。

 一方、この時期に、雇用者報酬がどうなったかということを見ますと、264兆円から254兆円へと、10兆円もの落ち込みを示しています。非正規雇用労働者は38・7%と最悪を記録しています。

 「1%の大金持ちが支配する社会でいいのか」というスローガンは、この日本でこそ大いに叫ばれるべきスローガンではないでしょうか。近く青年大集会も予定されています。日本でも、若者たちが勇気を持って立ち上がり、仲間を広げようと頑張っています。

 世界の労働者・若者のたたかいに連帯して、人間らしい労働、人間らしい賃金、貧困と格差をなくせ――このたたかいを新たな決意で大いにおこし、国会でもそういう視野を持った論戦を繰り広げていきたいということを最後にのべまして、開会にあたってのあいさつといたします。ともに頑張りましょう。(拍手)