2012年3月11日(日)

東日本大震災、原発事故から1年を迎えて

日本共産党幹部会委員長 志位 和夫


 、昨年3月11日の東日本大震災と原発事故から1年が経過しました。日本共産党は、あらためて犠牲になられた方々と、そのご家族、関係者に深い哀悼の気持ちを表明します。そしてすべての被災者、とりわけ今なお避難生活を強いられている方々に心からのお見舞いを申し上げます。

 未曽有の大災害から、被災者の生活と生業(なりわい)を再建し、被災地の復興を果たすこと、原発事故の被害から国民の暮らしと健康を守ることは、日本の政治に課せられた最重要、最優先の課題です。しかし、被災地での懸命の努力にもかかわらず、生活と生業の再建は遅々としてすすんでいません。政府の取り組みが、あまりにも遅く、その規模も小さいうえに、政府が復興策のさまざまな分野に、「競争力」や「規模」などの条件をつけ、上から選別し、切り捨てる施策を持ち込んでいることが大きな障害となっています。

 日本共産党は、選別と切り捨ての「復興」ではなく、すべての被災者の生活と生業の再建を支援し、地域社会全体を再建する復興を求め、3次にわたる「提言」を政府に提起し、被災地のみなさんの運動と共同して、いくつかの前向きの変化もつくってきました。大災害から1年という節目にあたって、すべての被災者の方々が「安心して住み続けられる故郷」を取り戻すまで、ともに力をあわせて奮闘する決意を新たにしています。

 さらに、救援ボランティアなど、日本共産党としての被災者の救援と支援の取り組みをさらに強めていくことを表明するとともに、全国の草の根からの支援、連帯の輪をさらに大きく広げることをよびかけるものです。

 、大震災から1年を過ぎて、被災者の生活の苦難はますます増大しています。災害で助け合い、命の灯をつないだ人たちが、その後の避難生活の中で暮らしに困窮し、健康を害したり、孤独死するなどということは、決してあってはならないことです。

 ところが政府は、被災者の医療、介護の減免措置や、失業給付の延長措置を打ち切るなど、支援策を後退させ続けています。医療、介護をはじめ被災者のいのちと健康を守る支援、仮設住宅、借り上げ住宅などの住環境のすみやかな改善、生活に困窮する被災者への特別支援を強く求めます。

 、働く場の確保と住まいの再建は、復興のカナメをなす課題です。

 仕事と雇用を作り出し、地域経済を再建するためにも、「二重ローン」問題の解決、被災した店舗、工場、漁港、農地などの復旧と事業立ち上げへの支援など、再建の意思のあるすべての事業者・企業を対象にした直接支援を抜本的に拡充することを求めます。

 住まいの再建は、被災者のこれからの生活の基盤であり、その展望が持てる住宅再建への支援策の抜本的拡充と復興公営住宅などの建設計画を急ぐことを求めます。

 復興事業を着実に進めるうえで、マンパワー不足が大きな障害となっています。国が緊急に被災自治体などに対する人的支援を強化することを求めます。

 、原発事故の被害は、1年後の現在も拡大し、避難をよぎなくされる人はいまだに増え続けています。大量にまき散らされた放射性物質は、子どもたちの健康や教育、農林漁業と食料をはじめ、社会と産業のさまざまな分野に、予想もされなかったような被害を次々に引き起こしています。被害が空間的にも、時間的にも、社会的にも広がり続けるという、原発事故がもつ“異質の危険”が大規模かつ深刻な形で明らかになっているのです。地震国、津波国である日本に、「安全神話」で国民を欺きながら、危険な原発を集中立地させ、国民と日本の社会と経済に重大な被害をもたらした責任は重大です。

 日本社会の将来のためにも、子どもたちの未来のためにも、政府が原発からの撤退を政治決断することを強く求めます。日本共産党は、「原発ゼロ」の日本をめざして、各地で草の根から大きく広がっている「原発ノー」の世論と運動と力をあわせ、共同の輪をさらに広げていくために力を尽くします。

 、原発災害から福島県民をはじめ国民のいのちと健康、生活、雇用と産業を守るために、徹底した除染と完全賠償、安全な食料、農林漁業の再生をはじめ、原発事故によるあらゆる被害の拡大防止と解決が求められています。国と東京電力の責任で、全面的な解決をはかるよう強く要求します。除染や賠償に対して、新たな線引きを持ち込み、分断と切り捨てをはかる動きが起こっていますが、絶対に許されないことです。

 政府や東電、電力業界、財界が、原発を存続させることを最優先としていることが、緊急課題の解決の大きな障害になっていることも指摘しなければなりません。原発を存続させるために、事故の責任逃れに終始し、甚大で深刻な被害の実態をなるべく小さくみせかけようとする態度は、言語道断だと言わねばなりません。

 、福島原発事故の原因究明はおろか、原発内部がどうなっているかさえわからないにもかかわらず、新たな「安全神話」を振りまきながら、原発の再稼働を強引にすすめようとしている政府の態度は重大です。福島原発事故の「収束宣言」を撤回し、事故原因究明もないままの原発再稼働の押しつけを中止することを強く要求します。

 、野田内閣が強引にすすめている消費税大増税とTPP(環太平洋連携協定)参加は、復興に逆行し、生活と生業の再建に重大な障害を持ち込むものです。被災地の産業を壊し、被災者の方々の日々の暮らしや住宅再建に重い増税を押しつける政治は、許すわけにいきません。

 暮らしと地域経済に冷水を浴びせ、懸命に立ち上がろうとしている中小企業、商店を押しつぶす消費税増税と、被災地の基幹産業である農林漁業に壊滅的打撃となり、地域の雇用も喪失させ、医療や金融など国民生活のあらゆる分野に重大な障害をもたらすTPP参加に、日本共産党は断固反対し、広範な人々と力を合わせてたたかう決意を表明します。