2012年5月14日(月)

「原発ゼロの日本」の政治決断を

福井 志位委員長の会見


 日本共産党の志位和夫委員長が13日、福井市で行った記者会見は次の通りです。


 福井県は、全国でも、もっともたくさんの原発が立地している県です。5月5日に、泊原発が稼働停止して、稼働原発がゼロになった新しい局面のもとでの、日本共産党の原発問題に対する基本的立場についてのべさせていただきます。

原発再稼働の押し付けには、一片の道理も、科学的知見のかけらもない

 まずのべたいことは、政府がいま進めている原発の再稼働の押し付けには、一片の道理も、科学的知見のかけらもないということです。

 第一に、福島原発事故の原因究明は始まったばかりであって、究明にはほど遠いということです。原子炉の実態すらわかっていません。地震動による被害もわかっていません。

 第二に、政府が必要だとした、とりあえずの30項目の「安全対策」なるものさえ、とられていないということです。たとえば、「重要免震棟」は事故のさいにきわめて重要な役割を果たす施設ですが、大飯原発の場合、「3年以内でつくる」という「計画」しかない。それで再稼働のゴーサインというのは無謀きわまりないものです。

 第三に、東日本大地震は、地震と津波の学問的知見の根底からの見直しを迫るものとなりましたが、その議論は始まったばかりだということです。たとえば、敦賀原発では、原子炉建屋直下の「破砕帯」が活断層であるということが最近わかりました。大飯原発では、すぐ近くの三つの活断層が連動した場合に、「想定」されている最大のゆれをうわまわることが、電力会社自身によって明らかになっています。

 第四に、原発事故が起こった場合の放射能被害の予測、住民避難の計画すら立てられていません。放射能被害の予測は、ストレステストの「1次評価」ではやられていません。放射能被害の予測がされていないから、住民避難計画も立てられない。事故が起きてもまったく対処ができません。

 第五に、まともな原子力規制機関がつくられておらず、つくられるめどさえたっていません。原子力安全委員会、原子力安全・保安院にたいする国民の信頼は失墜しているわけですが、それに代わるまともな規制機関をつくるめどすらたっていません。

 この5点を見ても、無謀な再稼働の押し付けを中止することを強く求めます。

 政府がもっぱら持ち出すのは、「電力不足」ですが、その根拠が客観的に示されているとはいえません。それに加えて、再稼働と電力需給の問題をてんびんにかけるという議論そのものが間違いです。「電力需給を考えれば多少の危険に目をつむれ」という議論は、こと原発に関しては絶対に許されません。

「原発ゼロの日本」への政治決断をおこなってこそ、展望が開けてくる

 いま政府がなすべきは、「原発ゼロの日本」への政治決断を行うことです。そうしてこそ、さまざまな問題を解決する展望が開けます。

 当面、LNG(液化天然ガス)なども確保して電力の供給力を本腰を入れて高める必要があります。省エネルギー対策も本腰を入れる必要があります。「ゼロ」の決断をしてこそ、当面なすべきことに本腰が入るようになると思います。

 さらに、再生エネルギーの本格的な普及、低エネルギー社会への本格的な取り組みなど、エネルギーのあり方の根本的な転換に、真剣に取り組めるようになります。

 その場合、現行の原発立地自治体への交付金をどうするかという問題もあります。私たちは、原発交付金については、自然エネルギーの開発を支援するものに抜本的に改革して、地域の雇用をつくりだすものにしていくことを提案しています。太陽、風力、小水力、バイオマスなど、再生可能エネルギーをどんどん起こして、それによって町おこしをする、雇用をつくる、そういうものを応援するように切り替えることを提案しています。

 原発立地自治体では、原発の稼働停止で、仕事がなくなる、営業もたいへんだということをうかがいます。立地自治体の当面の仕事や営業を守ることは、国の責任で行われるべきです。原発は、“国策”としてやってきたものであり、それが破綻したわけですから、国が責任をもって雇用や営業の当面の手当てをしなければなりません。「再稼働しないと仕事がなくなるぞ」という脅しは絶対にやってはいけないことだと強くいいたいと思います。

 いまやるべきは、「原発ゼロの日本」への政治決断であり、それをやれば新しい展望が開けてくる。

 逆に原発や再稼働に頼る姿勢を続けると、当面の電力供給でも責任をもった対応ができず、地元の雇用や営業の問題も、地域経済の問題も責任をもった対応ができない。現にそういう事態におちいっています。

 いまなすべきは「原発ゼロの日本」への政治決断だということを、強く政府に求めていきます。


記者団との一問一答

 ―原子力の規制機関はいかにあるべきですか。

 志位 原子力の規制機関をつくるというとき、大事な観点が二つあると思います。

 一つは、推進機関と完全に分離し、独立した強力な権限をもった機関とすることです。

 もう一つは、「原発ゼロの日本」の決断と一体に、規制機関をつくることです。すなわち、現に存在する原子力施設に対する規制だけでなく、原発を廃炉にしていく、使用済み核燃料を処理していく、その全体を規制する機関としていく必要があります。原発をなくすことを目標にし、その任務を果たす機関にすべきです。

 ―再稼働の問題点をあげられたが、それが解決すれば再稼働を認めるということですか。

 志位 私がのべたのは、再稼働の条件ではありません。再稼動が無謀だという問題点をのべたものです。

 ―原発が立地している福井では、地元は40年の愛着という感情もある。そういう人にどういうメッセージをおくりますか。

 志位 福島県にうかがい、原発を誘致した議員や首長さんたちともあいました。大事故が起こり、無念の思いを語っておられました。県議会の議長さんは、私に、「もっと共産党のいうことを聞いておけばよかったと、反省しています」と率直に語られました。福島県では、これまで原発推進に賛成されてきた方も、もう原発はなくしてほしいと変わっています。それは「オール福島」の声となっています。

 日本国民は、3・11で重大な体験をしました。長年、原発といっしょに暮らしてきた歴史があっても、ここで福島原発のようなことを、二度と日本でおこさないという立場で考えていく、これまで賛成してきた人も、反対してきた人も、いっしょになって考えていく、新しい段階にあるといいたいと思います。

 もう一つ、福島の原発事故は、たいへんな惨事となりましたが、それでも「最悪の事故」ではない、もっと大きな事故が起こりうるということも、正面から見なければなりません。原子炉から放出された放射性セシウムは、全体の2%から3%といわれています。しかし40%、50%が放出の危険もあったのです。そうなったら、想像を絶する事態となったでしょう。そういう教訓をあの大事故から引き出して、二度とおこさない。そのためには、「原発ゼロの日本」への政治決断を、いまおこなう。そこでみんなが力をあわせることが大切だと考えます。