2012年11月29日(木)

国民の選択に足る政党――日本共産党の躍進を

――政党を選ぶ四つの試金石

東京 志位委員長の訴えから


 日本共産党の志位和夫委員長が27日、東京・渋谷公会堂で開かれた大演説会で提起した「政党を選ぶ四つの試金石」は次の通りです。


写真

(写真)志位和夫委員長を迎えた日本共産党演説会=27日、東京都渋谷区

政党の値打ちが丸ごと問われる選挙

 みなさん。衆議院比例代表選挙は、政党名で投票する選挙です。

 この総選挙で、政党を選ぶさいに、もちろん政策が大切です。しかし、それだけでは足りません。私は、この選挙が、政党の値打ちが丸ごと問われる選挙になっているということを訴えたいのです。

 選挙間際になって、いまたくさんの党がつくられていますね。メディアも「選挙目当ての離合集散」と批判しています。「政党の渡り歩き」もひどいですね。自民党の議員が、みんなの党に行ったと思ったら、もう維新の会に変わっている(笑い)。こういう姿も報道されていました。

 ですから、その党が何を言っているかだけではなくて、どういう政党なのかが問われます。つまり、国民のみなさんの選択に足る政党なのか。もっとひらたく言いますと、安心して一票入れても大丈夫な党なのか。これが問われている選挙だということを言いたいのです。

(1)日本の前途を開く綱領を持っているか

 私は、それを見分ける試金石として、「四つの試金石」があると思います。

 第一は、日本の前途を開く綱領を持っている党かどうかです。

 今日は、日本共産党が示している「改革ビジョン」について、経済、消費税、原発、外交など、いろいろなお話をいたしましたが、私たちが、こういう「改革ビジョン」を示せるのは、日本の前途を開く綱領を持っているからなのです。

 日本共産党は、資本主義という矛盾に満ちた制度が、人類社会の最後の制度だとは考えていません。資本主義を乗り越えて、すべての人間に豊かで自由な生活を保障する未来社会を展望している政党です。同時に、社会というのは、主権者である国民のみなさんの意思にもとづいて、一歩一歩、階段を上がるように、発展するという見通しを持っています。その立場から、いま日本に求められているのは、「アメリカいいなり」、「財界中心」という「二つのゆがみ」をただし、資本主義の枠内で、「国民が主人公」の日本――憲法に書いてある通りに国民が主人公になる民主的改革だというのが日本共産党の綱領です。(大きな拍手)

 それでは、他の党はどうなっているでしょう。

 民主党は政権党なのに綱領を持っていません。綱領がなくて、よくやっていけるなと思います(笑い)。実は、民主党は、綱領をつくりたくてもつくれない党なんです。もともとバラバラの党ですから、綱領をつくろうとすると、党が壊れてしまう。最近になってようやく綱領をつくろうとしているようですが、そのはなから党が溶け出して、泥船から逃げ出すように、つぎつぎと離党者が続出しています。綱領をつくる前に党がなくなりそうですね。(笑い)

 自民党はどうか。自民党は、「民主党とは違って、綱領を持っている」と自慢しています。しかし、私は、拝見しましたが、自慢できるような綱領ではないですね。野党に転落して、あわててつくったものですが、そこにはどういう日本をつくるかのビジョンはさっぱり書かれていません。具体的に書かれていることは、二つだけです。一つは、「新憲法の制定」です。憲法9条を壊しますということです。もう一つは、社会保障は「自立・自助」ということです。社会保障を壊しますということです。憲法を壊します、社会保障を壊します、これだけしか綱領に具体的に書いていない。威張れたようなものではありませんね。

 それでは新しい党がつぎつぎにできていますが、これらの党はどうでしょう。率直にいって綱領が問題になる以前ですね。だってみなさん、党そのものがどうなるか分からないじゃないですか(笑い)。できたと思ったら、5日間でなくなった(笑い)。のぼったと思ったらすぐ沈んでしまった「太陽」がありました(笑い、拍手)。それから、今日、解散することを決めた党(「国民の生活が第一」)があるそうですが、この党もつくってから解散までせいぜい数カ月でしょう。

 いま、特定の政策だけで党を解散し、新しい党に合流しようという動きが伝えられています。しかしみなさん、それがどんなに大事な課題であっても、それやっていたら、選挙のたびごとに、党を解散し、つくりなおさなければならなくなるではありませんか。私は、こういう政党のあり方がまともな政党のあり方とは考えません。外交、経済、日本の進むべき進路について、まとまったビジョンを示してこそ、そういうビジョンの基本になる綱領を持ってこそ、国民に責任を持つまともな政党といえるのではないでしょうか。(大きな拍手)

 くわえていえば、選挙のあり方としても問題だと思います。単一の課題だけをかかげて、その是非だけをもっぱら争う。これでは、それ以外の問題は、国民に「白紙委任状」を求めることになってしまいます。この点では、苦い経験があります。2005年、小泉首相は、「郵政民営化」一本に争点を絞り込み、大量の議席を得ました。その議席を使って何をやったか。財界を司令塔にすえた「構造改革」をすすめ、貧困と格差を拡大し、社会保障をぼろぼろにしてしまったではないですか。国政選挙というのは、それぞれの政党が、内政、外交、国の進路についてまとまった公約を示し、その全体の審判を国民に仰ぐ。これがまともな姿ではないですか。「白紙委任状」方式は、民主的な選挙のあり方とはいえないのではないでしょうか。

(2)憲法、平和、民主主義を脅かす逆流に、勇気をもって立ち向かう党か

 第二の試金石は、憲法、平和、民主主義を脅かす逆流に、勇気をもって立ち向かえるかどうかということです。

 「維新の会」が、本格的な国政進出を狙って登場しています。石原慎太郎前東京都知事(代表)と橋下徹大阪市長(代表代行)が手を結びました。この党に、政治を変えるという期待を託せるでしょうか。中身をよく見ていただきたいのです。

 消費税は11%にあげるという。TPPは推進という。原発も推進だという。これでは古い自民党型政治そのものではないですか。橋下代表代行は、よく「既得権益とたたかう」といいますね。しかし、日本の最大・最悪の既得権益といったら何でしょうか。「財界権益」と「アメリカ権益」ではないですか。(拍手)

 ところが、「維新の会」は、この二つには、たたかうどころかひれ伏している。財界いいなりで、原発再稼働容認に急転換したなどは、その典型です。強いものにはこびへつらい、自分が「弱い」とみた相手は、徹底的にいじめぬく。こんな政治をはびこらせてはなりません。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 石原慎太郎代表は、「命がけで憲法を破る」と言っています。「守る」ではなくて、「破る」ですよ。教育現場に、「日の丸・君が代」を強制し、違憲・違法の処分を強行してきた人です。橋下代表代行も、憲法改定を主張しているだけではありません。憲法破りを「実践」してきた人です。大阪市の職員全員を対象に「思想調査」を強行しました。きびしい批判が集中して、中止に追い込まれましたが、反省はしません。憲法があたかも存在しないかのようにふるまい、憲法を壊す政治を実際にやってきた2人が手を結んだのです。

 しかも、石原代表は、外国特派員協会の講演のなかで、「日本は核保有の手順を検討すべき」だとまでいいました。被爆国の日本は、「核兵器のない世界」をつくるために先頭に立つべき国ではないですか(拍手)。その国の政党党首が、「核兵器の保有の手順を検討する」という。一方、橋下代表代行は、こともあろうに広島で「核兵器廃絶は無理だ」といった。2人そろって「核兵器大好き」の人が、トップをつとめている。私は、こういう政党には、被爆国の政治にたずさわる資格はないということを、言わなければなりません。(大きな拍手)

 結局、「新しさ」を売りものにしながら、やっていることは、憲法を壊し、平和を壊し、民主主義を壊す「突撃隊」――これが「維新の会」の正体であります。(拍手)

 ところが、多くの党が票ほしさに、この動きにこびへつらっています。公明党はその筆頭です。自民党もそうです。みんなの党もそうです。こういう状況でいいでしょうか。みなさん、日本を壊す逆流が起こったときに、こういう逆流にこびへつらう政党は、あまりにも情けないということを、私は言っておきたいと思います。(大きな拍手)

 しかし、みなさん。理性の声が起こっています。大阪でも東京でも起こっています。平和、民主主義、人権を守ろうという理性の声が、広く起こっています。こういう理性の声の一番頼りがいのあるよりどころとなっているのが日本共産党ではないでしょうか。(拍手)

 みなさん。東京と大阪という二つの都市を、憲法を壊す逆流の発信地にしてはいけません(拍手)。どうか日本共産党を躍進させてください。よろしくおねがいします。(大きな拍手)

(3)草の根で国民と結びついている政党か、浮き草の政党か

 第三の試金石は、草の根で国民と結びついている政党か、それとも浮き草のような政党かということです。

 いま離合集散を繰り返している政党に共通するものは、国民に根を持たない浮き草のような政党だということです。だから、身軽に(笑い)、勝手にくっついたり、離れたりできるんです。

 それから一つ、特徴があります。みんな、政党助成金が頼みの綱になっている。どの党も、国会議員を5人以上を集めるのに必死ですが、どうして5人以上がほしいかといえば、その最大の理由は、5人以上が政党助成金をもらう条件となっているからです。

 いま、日本共産党にたいして、政策を見れば、どれもいちばん正しいことを言っている。すべてスジが通っている。でも、「力が小さい」という声があるかもしれません。しかし、私は、それはちょっと違うということを言いたいと思うんです。

 たしかに国会の中だけを見れば、衆議院議員は9人ですから少数です。だからこそもっともっと力をつけたい。その第一歩として、今度の選挙では「議席倍増」を実現するために、頑張り抜きます。

 しかし、草の根のレベルを見てください。そうしますと、全国に、日本共産党は、31万8000人の党員のみなさんがいて、約2万の党支部があって、国民のみなさんの苦難軽減のために日夜頑張っています。こういう党は日本共産党しかありません。(拍手)

 私たちは、130万人の「しんぶん赤旗」の読者を持っています。政党機関紙で比較すると、読者数で第1位が「しんぶん赤旗」です。こんな立派な政党機関紙をもっている党はありません。数といい、中身といい、ダントツ1位が日本共産党です。(大きな拍手)

 日本共産党の地方議員の数は2737人です。自民党、公明党、共産党の三つの党がほぼ同数の地方議員をもつ、トップグループの一角をしめています。そのなかでも、女性議員は965人、これもダントツ1位が日本共産党です。(大きな拍手)

 こういう草の根の力をもっていますから、今度の総選挙では、小選挙区でも全区に立候補しようということでやってきましたが、今日まで300選挙区中298選挙区が決まりました。(拍手)

 残りは二つですが、そのうち一つは立てないことにしております。いま沖縄では島ぐるみで、オスプレイの配備反対、普天間基地閉鎖・撤去が、県民の総意となっています。この島ぐるみの声を、国政に届けるという見地にたって、沖縄2区では、日本共産党は候補者を立てず「自主投票」にする。沖縄1区については、日本共産党の赤嶺政賢さんが候補者ですが、社民党が候補者を立てず「自主投票」にする。こういう対応もしていることを、この機会にご報告しておきたいと思います。(拍手)

 それから、なによりも党の財政を国民のみなさんに依拠して、自前でまかなっているのは日本共産党だけです。(大きな拍手)

 企業・団体献金を受け取らない、政党助成金も受け取らない。政党助成金の受け取りを拒否した額、17年間でいくらだったかと計算してみると、350億円以上にもなりました。350億円といいますと、党本部ビルの建設にかかったお金は85億円です。それもすべて募金でまかないましたが、党本部のビルが四つ建つぐらいのお金を(笑い)、私たちは返上してきたのです。みなさん、「身を切る」というんだったら、政党助成金こそとっととなくせ(大きな拍手)。こう言いたいですね。

 それからみなさん。すべての政党のなかで、党本部の床面積が一番広いのも日本共産党です(笑い、拍手)。いざというときの防災の拠点になるようにつくりました。自民党本部よりも広いんです。自民党本部は、国有地のうえに立っています。日本共産党の本部は、ちゃんと自分の土地のうえに立っています。自民党は、国有地のうえにあぐらをかいてないで、国有地は返したらどうですか。(拍手)

 こうしてみますと、共産党は「力が小さい」ということもいわれますが、草の根レベルでみたら、国民のみなさんと一番しっかりと結びつき、国民の願いのために働き、政治を動かしている、“草の根の大政党”が日本共産党なんだということを私は訴えたいし(大きな拍手)、どうかこの力をさらに大きくしていただきたいということを、お願いするものです。(拍手)

(4)歴史で試された党か、自分の歴史に責任を負わない党か

 第四の試金石は、歴史で試された党か、自分の歴史に責任を負わない党か。ここを見てほしいと思います。

 日本共産党にいま、「筋を通す」党という注目が集まってまいりました。いろいろな党ができては、なくなっていますから、「筋を通す」党の姿が、かえって目立つんですよ(笑い)。日本共産党という名前を変えないのも、かえって新鮮になっているのではないでしょうか(笑い、拍手)。名前を覚えきれないくらい、どんどん名前を変える党が多いですからね。(笑い)

 日本共産党が、「筋を通す」のは歴史の裏づけがあるということを、私は訴えたいと思います。私たちは、党をつくって90年になりますが、戦前、天皇絶対の暗黒政治と侵略戦争が、日本とアジアの国民を苦しめていた時代に、命がけで反戦・平和と主権在民の旗を掲げて降ろさなかったのが、日本共産党であります。(大きな拍手)

 私たちの多くの先輩が、弾圧で倒れました。『蟹工船』の作者として有名な日本共産党員作家、小林多喜二も、特高警察に捕まったその日のうちに、残酷な拷問によって命を奪われました。たくさんの先輩たちが犠牲になったけれども、日本共産党が主張していた方向こそ正しかったということは、戦後の日本国憲法に恒久平和と主権在民がはっきり刻まれたことで、歴史が判定を下したのではないでしょうか。(大きな拍手)

 戦後、日本共産党は、旧ソ連、中国・毛沢東派、双方からの激しい干渉の攻撃を受けました。「いいなりの政党になれ」という攻撃です。しかし、断固としてそれをはね返した。チェコスロバキアやアフガニスタン侵略のような、覇権主義に対しては、「社会主義と縁もゆかりもない」と、厳しく反対を貫きました。社会主義の看板で、自由と民主主義を抑圧する暴挙にたいしても、きびしく批判を貫いてきました。自主独立の共産党が、日本共産党であります。(大きな拍手)

 そして、60年来の自民党型政治と正面対決し、「国民が主人公」の新しい日本をめざして、一貫して頑張ってきたのも日本共産党です。

 1世紀ちかい歴史で試された党、日本共産党こそ、21世紀の日本の未来を安心して託せる政党だと、私は訴えたいのであります(拍手)。日本共産党に投じた票は、決して行方不明になったりしません(笑い)。入れたと思ったらなくなってしまった。こんなことには絶対になりません。みなさんの願いが、安心して託せる政党が日本共産党だということを、心から訴えたいのであります。(大きな拍手)

 他の党についていいますと、自分の歴史に責任を負わない政党が多すぎると思います。いまの自民党、民主党、社民党などの前身の政党は、太平洋戦争がはじまる直前に、党を解体して、「大政翼賛会」に合流し、侵略戦争を推進しました。ところが、それへの無反省を決め込み、侵略戦争を美化する潮流が台頭しています。そういう勢力の台頭を許したら、日本はアジアでも世界でも、生きていく道を失ってしまいます。

 それから、60年続いた自民党型政治にたいしても、自民党はさっぱり反省していません。自民党の今回のスローガンを見てください。「日本を、取り戻す」ですよ(笑い)。「取り戻され」たら困りますよ。日本が大迷惑です。(笑い、拍手)

 自分の歴史に責任を負わない党に、未来は託せません。(拍手)

 日本共産党は1世紀近い歴史で試された党です。昨日今日できた党とは違います。明日どうなるかわからない政党とも違います。日本共産党こそ21世紀の未来、安心して託せる政党です。

 みなさん。この「四つの試金石」にてらして、日本共産党こそ、国民の選択に足る「政党らしい政党」であるということを私は心から訴えたいと思います。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)