2012年11月2日(金)

志位委員長の代表質問 衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が1日、衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)代表質問をする志位和夫委員長=1日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して野田総理に質問します。

 野田内閣が、消費税大増税をはじめ、国政のあらゆる問題で、民意に背き、公約を裏切ってきた責任はきわめて重大であり、不信任に値します。参議院での問責決議可決という事態を重く受け止めるべきであります。

 日本共産党は、国政の基本問題について国民の前で議論し、争点を明確にしたうえで、すみやかな解散・総選挙で国民の審判を仰ぐことを、強く要求するものです。

 そうした立場から以下、質問を行います。

大震災からの復興問題――復興予算流用をやめ、住宅と生業再建への公的支援を

大企業に莫大な補助金、被災地の施策は切り捨て――あまりに理不尽ではないか

 まず東日本大震災からの復興問題についてです。

 「震災復興」を口実として、被災地と関係ない事業に復興予算が流用されていることが明らかとなり、国民の厳しい批判が広がっています。「国内立地補助金」の名目で、被災地とは関係のないトヨタ、キヤノン、三菱電機、京セラ、東芝など、大企業が2356億円もの補助金を復興予算から受け取っています。

 その一方で、被災地の中小企業の再建を支援する「グループ補助金」は、申請した事業者の6割がふるい落とされています。国が、医療・介護の負担減免措置を9月末で打ち切ったことも大問題になっています。

 国民に「被災地復興のため」といって25年にわたる所得税・住民税の増税を求めておきながら、被災地と関係ない大企業に莫大(ばくだい)な補助金をばらまき、被災地が切実に求めている施策を切り捨てる。総理、これはあまりに理不尽だと考えませんか。

「復興基本法」を改め、住宅と生業の再建に公的支援を

 なぜこのような流用がまかり通るのか。

 その大本には、昨年6月に「復興基本法」が制定されたときに、民主・自民・公明3党の談合で法案が書き換えられ、「被災地域の復興」という当初案を「東日本大震災からの復興」と書き換えて被災地域という限定を外したうえで、当初案になかった「活力ある日本の再生」という文言を目的に追加したという問題があります。

 これを受けて11月に編成された第3次補正予算で、「国内立地補助金」をはじめ、被災地と関係ない予算が多数計上されたのであります。復興予算の流用の第一の責任が政府にあることは明らかですが、一体になってすすめた自民党、公明党などにもきびしい反省が求められます。

 政府は、国民の強い批判を真摯(しんし)に受け止め、復興予算の流用をただちにストップすべきです。そして、この流用の大本となった「復興基本法」を改めるべきであります。

 さらに、「個人財産の形成になる」などといって、住宅、商店、工場、医療機関などの復旧を支援しないという態度を根本から改め、住宅と生業(なりわい)の再建に必要な公的支援を行うことを復興の基本原則にすえることを強く求めます。総理の答弁を求めます。

消費税大増税と日本経済――増税実施を中止し、リストラの違法行為をやめさせよ

大不況のさなかの大増税など論外――実施の中止を要求する

 つぎに消費税大増税と日本経済について質問します。

 増税法案が強行されましたが、国民との矛盾はいよいよ深刻になっています。9月、国税庁が発表した2011年の民間平均給与は、ピークだった1997年と比較して年間58万円、12%も落ち込みました。国民の所得が減り、消費が落ち込み、内需が冷え込む、「デフレ不況」の悪循環が進行しています。消費税は中小企業にとって、もともと苛酷な税制ですが、デフレ下で価格への転嫁はいっそう困難になっています。

 こんな大不況のもとで、消費税大増税を強行したらどうなるか。8月に発表された帝国データバンクの調査では、税率引き上げ後に「国内消費が縮小する」と考えている企業は、9割近くにのぼっています。総理は、日本経済への甚大な打撃をどう認識しているのですか。大不況のさなかの大増税など論外であり、実施を中止すべきではありませんか。答弁を求めます。

電機・情報産業の大リストラでの違法行為を根絶し、社会的責任を果たさせよ

 電機・情報産業の大企業――パナソニック、ソニー、NEC、IBMなどが、13万人もの首切り・リストラを強行していることは、きわめて重大です。

 この大リストラは、繰り返しの面談による退職強要によって強行されています。NECでは、1人の労働者に11回も面談し、退職を強要したという訴えが寄せられました。会話が外に漏れないように通気口を鉄板でふさいだ面談室で、繰り返し、繰り返し、退職を迫りました。疲れ果てた男性は病気になりましたが、退職強要は続きました。11回目の面談で、上役に「残れると思った? 残れないよ」と追い詰められた男性は、思わず涙があふれ、「病気にまでさせておいて、さらに追い打ちをかけるんですか。もう自殺するしかない」と叫んだとのことです。

 労働者をここまで追い詰める退職強要が横行しているのです。繰り返しの面談による退職強要は、違法行為です。総理、ただちに違法行為の実態をつかみ、それを根絶するために、断固たる措置をとるべきではありませんか。

 日本IBMでは、ある日突然、正当な理由なく解雇を通告し、そのまま労働者を職場から締め出す「ロックアウト解雇」というやり方がとられています。ある男性の労働者は、ある日、終業時刻のわずか15分前に、人事担当者からいきなり解雇通告が読み上げられ、「今日の終業時刻までに私物をまとめて帰れ。明日からは出社禁止だ」とつげられ、同僚がまだ仕事を続けるなか、上司の監視を受けながら私物の整理をさせられ、それ以来、一歩も職場に入れない状態となりました。解雇通知書には、「業績不良」が理由として書かれていましたが、その根拠を会社に求めても、何の説明もされていません。

 労働者に考える暇さえ与えず、有無をいわせず解雇に追い込む。これは明らかに解雇権の乱用であり、絶対に認められるものではありません。総理は、このような非道な解雇が許されると考えますか。

 生きた人間を人間扱いせず、力ずくで解雇に追い込む、このような恐るべき無法の横行を放置していて、日本経済の再生はないと考えますが、いかがですか。

 電機・情報産業の大企業の内部留保は26兆円にも及びます。雇用や地域経済に責任を負わない身勝手なリストラにさいしては、政府が乗り出してリストラをやめさせ、企業に社会的責任を果たさせる――これはヨーロッパでは当たり前に行われていることです。政府は、そうした姿勢でのぞむべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

「消費税に頼らない別の道がある」――「経済提言」についての見解を問う

 日本共産党は、2月に「経済提言」を発表し、消費税増税に反対するとともに、「消費税に頼らない別の道がある」ことを提案しています。

 一つは、無駄遣いの一掃と、「応能負担」の原則――負担能力に応じた負担の原則に立った税制改革を進めることです。行き過ぎた富裕層減税のために、所得1億円を超えると所得税の負担率が下がるという逆転現象が生じています。行き過ぎた大企業優遇税制のために、法人税の実質負担率が、中小企業が26%に対して、大企業が19%という逆転現象が生じています。これらの異常な不公平税制をただし、まず富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を行うべきだと考えますが、いかがですか。

 二つは、国民の所得を増やす経済政策への転換です。大企業にため込まれている260兆円におよぶ内部留保を、賃上げ、非正規社員の正社員化、中小企業への適正な単価の保障などによって、社会に還元するための、社会的ルールをつくるべきです。それは、日本経済を内需主導の健全な成長の軌道にのせ、税金の自然増収をもたらし、社会保障充実と財政危機打開の道を開くものともなるでしょう。

 わが党の「経済提言」についての総理の見解を問うものです。

「即時原発ゼロ」の実現を――原発推進政策の転換を求める

口先で「原発ゼロ」といいながら、原発にいつまでもしがみつく姿勢ではないか

 つぎに原発問題について質問します。

 この間、「原発ゼロの日本」を願う世論と運動が広がり、政府も、「過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」と認めざるをえなくなりました。

 ところが、政府は、原発の再稼働を推進し、青森県・大間原発の建設を再開し、使用済み核燃料の再処理を続けるとしています。「2030年代に原発稼働ゼロを可能にする」という、きわめて不十分な方針すら、日本経団連やアメリカに批判されると、閣議決定を見送りました。

 結局、政府の姿勢は、口先では、「原発ゼロ」といいながら、原発推進政策を続けるというものではありませんか。

「即時原発ゼロ」は可能――原発への未練を断ち切り政治決断を

 日本共産党は、9月、「『即時原発ゼロ』の実現を」と題する「提言」を発表し、総理に届けました。

 これは、福島原発事故の被害が拡大し続けていること、原発稼働を続ける限り処理方法のない「核のゴミ」が増え続けること、原発再稼働の条件も必要性も存在しないこと、政府が行ったパブリックコメント(意見公募)でも8割が「即時原発ゼロ」を求めたことなどを踏まえ、「すべての原発からただちに撤退する政治決断をおこない、『即時原発ゼロ』の実現をはかること」を提起したものです。

 さらに、「提言」では、政府が無責任な「収束宣言」を撤回し、福島の被災者支援と復興に総力をあげて取り組むことを提起しています。

 総理に、わが党の「提言」についての見解を問うものです。

 「即時原発ゼロ」は可能です。政府は、「電力不足になる」という脅しで大飯原発の再稼働を強行しましたが、関西電力は、再稼働をしなくても“猛暑の夏”を乗り切れたことを認めたではありませんか。政府は、「原発ゼロで電力料金が2倍になる」などと脅していますが、政府が根拠とした試算でさえ、「原発ゼロ」でも全原発を稼働させても、電気料金はほとんど変わらないという結果が出ているではありませんか。

 再生可能エネルギーの導入可能量は、全原発の発電能力の約40倍であり、この大きな可能性を現実にする本格的な取り組みを開始すべきです。そのためにも、原発への未練をきっぱり断ち切り、「即時原発ゼロ」の政治決断を行うことを強く求めるものです。総理の見解を求めます。

尖閣諸島問題――冷静な外交交渉による解決を

 尖閣諸島をめぐって、日中の緊張と対立が深刻になっています。

 私は、9月、「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」と題する「提言」を発表し、日本政府および中国政府に、わが党の立場を提起しました。

日本の領有の歴史的、国際法上の正当性について

 日本共産党は、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当であるという突っ込んだ見解を明らかにしています。

 第一に、日本は、1895年1月に、尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは「無主の地」の「先占」――持ち主のない土地を先に占有するという、国際法上まったく正当な行為でした。

 第二に、中国側は、尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないということにあります。

 第三に、尖閣諸島に関する中国側の主張の中心点は、「日本が日清戦争に乗じてかすめ取った」というものです。しかし、日清戦争によって日本が不当に奪取したのは、台湾とその付属島嶼(とうしょ)および澎湖(ほうこ)列島であり、尖閣諸島はそのなかに含まれておらず、中国側の主張は成り立ちません。日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為でした。

 以上の諸点について、政府の見解を問うものです。

領土に関わる紛争問題の存在を認め、冷静な外交交渉による解決を

 問題は、歴代日本政府が、中国政府に対して、日本の領有の正当性について理を尽くして説いたことが、ただの一度もないということです。

 1972年の日中国交正常化、78年の日中平和友好条約締結のさいに、日本政府は、尖閣諸島の領有問題について、事実上「棚上げ」にするという立場をとりました。これはだらしない外交態度だったといわなければなりません。

 にもかかわらず、その後、日本政府は、「領土問題は存在しない」という立場だけを、かたくなに繰り返してきました。そのことによって、日本は、中国に対して領有の正当性の主張もできず、中国の非難に対して反論もできない――主張も反論もできないという自縄自縛(じじょうじばく)に陥ってきました。そのことは、先日の党首会談で、総理も、「これまでは思考停止になっていたことは反省しなければならない」と認めた通りです。

 私は、「領土問題は存在しない」という立場をあらため、領土に関わる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決をはかる立場に立つことを提起するものです。この提案は、尖閣問題での「外交不在」から「外交攻勢」に転じることを求めるものです。

 同時に、物理的対応の強化や、軍事的対応論は、理性的な解決の道を閉ざす危険な道であり、日中双方がきびしく自制することが必要であります。冷静な外交交渉による解決に徹する必要があります。

 さらに、尖閣問題で、日本が領有の正当性を説得力をもって主張するためには、過去の侵略戦争に対する真剣な反省が不可欠です。総理は、日清戦争に始まる「50年戦争」が、領土拡張を目的とした侵略戦争であったことを認めますか。それを認めてこそ、台湾・澎湖のように侵略で不当に奪取した領域と、尖閣のように正当な手続きで領有した領土とを、はっきり区別し、日本の領有の正当性を堂々と主張することができるということを、強調したいのであります。

 以上の諸点について、総理の見解を求めます。

「こんなアメリカいいなり政治でいいのか」――TPP、米軍基地問題について

TPP問題――総理のいう「守るべきもの」とは何か

 最後に、「こんなアメリカいいなりの政治でいいのか」と多くの国民が感じている二つの問題について質問します。

 一つは、TPP(環太平洋連携協定)参加問題です。この問題について、総理は、所信表明演説で「守るべきものは守りながら…推進する」とのべました。それではうかがいます。総理のいう「守るべきもの」とは何か。具体的に答弁されたい。

 TPPは、「例外なき関税撤廃」を原則としており、これに参加すれば日本農業は壊滅的打撃を受けます。また、「非関税障壁の撤廃」を原則としており、医療を壊し、雇用を壊し、食の安全を危険にさらし、日本の主権を丸ごとアメリカに売り渡すことになることは、すでに明らかです。日本共産党は、TPP交渉参加を断念することを、強く求めるものです。

米兵暴行事件――「米軍基地があるかぎり、悲惨な事件はなくならない」

 いま一つは、米軍基地問題です。米海兵隊のオスプレイ配備強行と、米兵による集団女性暴行事件に対して、激しい怒りの声が噴き出しています。

 沖縄における米兵犯罪は、本土復帰以降、警察が発表しているだけでも5790件、このうち性的暴行事件は127件にのぼります。しかも、これらは氷山の一角であり、被害者が声をあげられず、泣き寝入りを強いられたケースも多数あります。

 「米軍基地がある限り、悲惨な事件はなくならない」――沖縄ではこうした声が高まっています。沖縄県議会が全会一致で採択した抗議決議には、「県民の我慢の限界をはるかに越え、県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」と明記されました。全会一致の県議会決議に「米軍基地の全面撤去」という言葉が明記されたのは初めてのことであります。総理は沖縄のこの声をどう受け止めますか。

オスプレイ配備――日米合意さえ無視した横暴勝手を野放しにするのか

 オスプレイ配備にかかわって、日米両政府が、「飛行は人口密集地を避けること」などの「安全対策」なるものに合意したにもかかわらず、それすら無視した飛行が行われていることはきわめて重大です。沖縄では、人口密集地・住宅地上空での飛行が常態化しています。伊江島では重いコンクリートブロックをつり下げ、集落上空を飛んでいたことが目撃証言で分かっています。総理は、日米合意さえ踏みにじられているという認識はありますか。米軍の横暴勝手を野放しにするつもりですか。しかとお答えいただきたい。

 ことは沖縄だけの問題ではありません。七つの低空飛行訓練ルートなど、日本全土でオスプレイの低空飛行訓練が計画されていることに対して、全国26都道府県の139自治体で配備や訓練に反対する意見書・決議が可決されています。「沖縄県民のみならず、日本国民の命を危険にさらす」――総理は、全国の自治体のこうした声にどう答えますか。

 日米両政府は、日米安全保障条約を盾にオスプレイの配備を押し付けようとしています。しかし、そうすればするほど“それならば日米安保をなくせ”という声は高まらざるをえないでしょう。

 日本共産党は、オスプレイ配備の撤回、普天間基地の無条件撤去を求めます。米軍基地の全面撤去を求めるとともに、アメリカいいなりの根源にある日米安保条約を廃棄して、日米友好条約にかえることを強く要求します。総理の見解を求めて質問を終わります。