2013年3月11日(月)

「原発ゼロの日本」へ今日を新たな出発点にして

3・10東京集会 志位委員長のあいさつ


 10日に開かれた「東日本大震災復興と原発ゼロの実現めざす3・10東京集会」で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなったあいさつは次のとおりです。


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(写真)発言する志位和夫委員長=10日、東京・日比谷公園

 みなさん、こんにちは(「こんにちは」の声、拍手)。日本共産党の志位和夫です。日本共産党を代表して心からの連帯のごあいさつをさせていただきます。(拍手)

 私は昨日、福島第1原子力発電所の視察に行ってまいりました。原発サイトの中に入って視察し、免震重要棟の内部でも説明を受けました。いま、福島原発はどういう状態になっているのか、そのご報告をまずさせていただきたいと思います。

福島原発の現状――「収束」とほど遠い、事故の真っただ中にある

 福島第1原発の現状を一言でいいますと、政府は「収束宣言」をしたわけですけれども、収束とはほど遠い、事故の真っただ中になおあるというのが現状であります。

 とりわけ、汚染水の増加がきわめて深刻です。危機的な状況にあるといわなければなりません。

 いま、福島第1原発では、1号機、2号機、3号機のメルトダウンした核燃料を冷やすために大量の水を送り続けるという作業が続いています。ところが、原子炉建屋などに地下水が1日400トンも、どんどん流れ込んでくるわけです。そのために、高濃度の汚染水がどんどん増加するという事態が起こっているわけであります。

 放っておきますと汚染水があふれ出しますから、高濃度の汚染水の中から放射性セシウムを除いて、残った汚染水をタンクに詰めるという作業が行われています。放射性セシウムを除いたといっても、放射性ストロンチウムなどさまざまな放射性物質が入っている汚染水ですが、それをタンクに詰める作業が行われています。

 行ってみますと、原発サイトの中はタンクだらけです。一つのタンクに1000トンの水が入るそうですが、1日400トンの地下水が流れ込むわけですから、2日半でいっぱいになってしまう。この1000トンのタンクをはじめ、大小の800ものタンクが林立している。ここが本当に原子力発電所なのかと思うような光景が目の前に広がってきます。

 すでにタンクに詰めた汚染水は27万トンです。どんどん増えます。タンクを増設するという説明でしたが、増設できる限界は70万トンまでということでした。そうしますと、増設をしたとしても、あと2年で汚染水の置き場がなくなってしまうという説明でした。

 そこでいま東電が考えているのは、「アルプス」(ALPS=多核種除去装置)という機械をつかって、タンクの汚染水からさらに放射性ストロンチウムなどを除去し、処理後の汚染水を「海洋放出」してしまおうということです。しかし、「アルプス」が予定通り働いて、放射性ストロンチウムなどを取り除いたとしても、放射性トリチウム(水素の同位体で「3重水素」ともいう)というのが残るのです。

 みなさん。どんな形にせよ放射性物質を海に放出するなどということは絶対に許してはならないということを、私はいいたいと思います。(拍手)

原発事故の収束と廃炉は一大事業――東電と国は責任をもってやりぬけ

 いま、こういう状況になっているのが福島原発であります。

 みなさん。「収束」などしていません。事故から2年たってもなお事故の真っただ中にあるのが福島原発です。汚染水一つとっても、解決の見通しがないのが現状なのであります。

 原発事故の収束と廃炉のために、東電の責任はもちろんですが、日本の英知を結集した一大事業としてこの仕事をやりぬかなければなりません。

 そのさい、現場では、3千人もの人々が収束と廃炉のために働いているわけですが、安全と健康が心配です。労働条件も心配です。安全管理、健康管理に万全を期し、労働条件を可能なかぎり良くしていくことが必要です。

 それも含めて、収束と廃炉という大仕事を、東電と国は責任をもってやりぬけということを、私は、強く求めていきたいと思います。(拍手)

「収束宣言」を撤回し、除染と賠償を徹底的に行え

 私は、福島第1原発を視察し、いまお話しした原発の現状をふまえて、とくにつぎのことを要求していきたいと思います。

 第一に、「収束宣言」を撤回して、福島のすべてのみなさんがふるさとを取り戻すまで、収束と廃炉、除染と賠償を徹底的に行っていく責任を、東電に果たさせ、国に果たさせていこうではありませんか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 政府が「収束宣言」を出したことは、被災者支援のすべての施策を中途半端にし、復興にとりくむうえで大きな障害になっています。原発の現状のいったいどこが「収束」か。「収束宣言」を取り払い、福島を取り戻すまで、福島に心を寄せて、ともに力をあわせようではありませんか。(拍手)

原因もわからず、収束すらしていないもとで再稼働など論外

 第二に、訴えたいのは、原発再稼働など論外だということです(拍手)。だいたい事故の原因すらわかっていません。地震・津波の後、どういう経過を経て原発が壊れたか、経過すらわかっていません。そして、さきほどお話ししたように、何よりも事故が収束すらしていないではありませんか。

 事故の収束すらできない政府が、どうして再稼働などやることが許されるでしょうか。断じて許すわけにはいきません。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 私は、先日、衆院本会議で安倍首相をただしました。“あなたがた自民党政権は、「日本では過酷事故は起こらないから原発は安全だ」と「安全神話」をこしらえて、あの事故を起こした。厳しく反省すべきだ”とただしました。

 そうしましたら首相は答弁で、“「安全神話」については反省いたします。おわびします”といいました。「おわびする」というのだったら、再稼働なんかできないはずではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 安倍内閣がいまやろうとしているのは、新たな「安全神話」づくりです。これまでの「安全神話」は、「日本では過酷事故は起こらないから安全です」という「神話」でした。いま原子力規制委員会が作ろうとしている「新安全基準」に盛り込まれている「新安全神話」は、「過酷事故が起こることはありうるけれども、世界最高水準の安全性が確保されます」(笑い)という「神話」です。このまったく自己矛盾した悪質な「新安全神話」をてこにして、原発再稼働を進める動きを絶対に許さないたたかいにとりくもうではありませんか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

人間社会と原発は両立できない――「即時原発ゼロ」の政治決断を

 そして第三に、私が訴えたいのは、人間社会と原発は決して両立できないということです。

 私はJビレッジ(楢葉町の作業拠点)というところからバスで福島第1原発に向かう途中で、いわゆる「警戒区域」――「帰還困難地域」と国が区分している地域に入りました。

 「帰還困難地域」に入りますと、田畑にはセイタカアワダチソウなど雑草が生い茂っている。住宅も荒れ果てた状態です。もちろん、人の姿はまったくありません。あたかも2年の間、この地域では時間が止まったかのようであります。

 みなさん。この「帰還困難地域」とされている地域には、2万6千人もの方々の生活の営みがあったわけです。その生活の営みを一瞬にして断ち切ってしまったのが原発事故であります。私は、その恐ろしさを、目のあたりにする思いでありました。

 みなさん。原発と人類社会は共存などできません。そして、再稼働はやらせてはならないし、できません。それならば、みなさん、ただちに日本中のすべての原発をなくせ――「即時原発ゼロ」の政治決断を、政府に求めていこうではありませんか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 今日を新たな出発点にして、「原発ゼロの日本」をつくるために、ともにがんばりましょう。(歓声、大きな拍手)