志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2013年11月23日(土)

汚染水問題 どう打開

共産党シンポ パネリストの発言から


 東京電力福島第1原発の汚染水問題の解決へ立場を超えて知恵を合わせて打開の道を探ろう―。21日に国会内で開かれた汚染水問題シンポジウム(日本共産党主催)には、各界で活躍する6人のパネリストがさまざまな角度から報告しました。パネリストの発言と、志位和夫委員長の主催者あいさつを紹介します。


世界で伸びる再生エネ

東京都市大学学長、福島原発事故独立検証委員会委員長

北澤 宏一さん

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 汚染水の問題が解決できないとどういう国になるか。国家存亡の危機に発展する恐れがあります。

 事故後、いろんな国を歩いています。経済的先進国で日本より国土の小さな国は、脱原発を決意するという経験則が成り立ちます。原発事故が自分の国で起きたら、国の終わりがくるかもしれないという問題です。

 再生エネルギーではエネルギーはまかなえないという議論があります。しかし、世界規模で再生エネルギーは毎年倍加する勢いで伸びています。3、4年前のデータでなく直近のデータで見なくてはいけません。

 再生エネルギーの流れはこれからも広がるでしょう。その流れの進展を事実でみて、エネルギー政策を判断していくことが大切です。

 原発がなくなると日本経済はめちゃくちゃになる、経団連がいってきたことです。これは事実に反することが起きているのではないか。事実がどう推移していくか、みなさんにも見ていただきたい。

原子力複合体を超えて

法政大学社会学部教授、原子力市民委員会座長

舩橋 晴俊さん

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 原発事故は技術的多重防護の破綻とともに、社会的多重防護の破綻を示しています。

 電力会社がエラーをしたら規制機関がチェックをする。規制機関がエラーをしたら裁判所が危険な施設に差し止め判決を出すというのが本来の社会的仕組みですが、これが破綻していました。

 電力会社の巨大なマネーに支えられた原子力複合体とでもいうべき存在があるからです。電力会社による利益追求が、国会、政治家、地方行政、メディアをコントロールしてしまう。

 汚染水への対応が迷走するのも、東京電力が黒字化のために、対策費用を圧縮しようとするからです。2011年6月に地下遮水壁計画を、株価下落を恐れ頓挫(とんざ)させたことに明瞭に表れています。

 この構造を変えるには、社会的政策を民衆が討論してつくる「公共圏」を対置することです。そこでの公論を政治に反映させる。経済産業省を超えた地平からエネルギー政策をつくることが必要です。

上流側で地下水対策を

元電力中央研究所主任研究員

本島  勲さん

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 今必要なのは、原子炉建屋に地下水が入り込むのを止める対策をとること、汚染水をためるタンクを安全に管理することです。敷地内の地下水、汚染水を海に流すべきではなく、当面は管理することが必要だと考えています。

 汚染水対策で凍土遮水壁が採用されましたが、世界的にこれだけ大規模なものは経験がありません。岩盤の中の地下水というのは均一に流れているのでなく、水が凍るのかどうかは大変な問題です。

 東電は、福島第1原発の下で地下水が流れているのは、地下の泥質部の上だけだとしていますが、地下水の流量を考えれば、泥質部の下にも流れているのではないでしょうか。下で地下水が流れていれば、海底に流出しているかもしれない。

 岩盤の地下水を止めるのは至難の業です。地下水の上流側にトンネルを掘って排水するなど流入地下水を減らす対策が必要です。今からでも遅くないので、対策の再構築をしなければならないと思っています。

放射性物質の把握重要

元気象研究所地球化学研究部長

廣瀬 勝己さん

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 30年近く環境の放射性物質の研究をしてきました。今後、モニタリング(監視)が必要な核種として放射性セシウム、ストロンチウム90、トリチウム(3重水素)があります。数十年の半減期を持ち、長期の監視が必要です。

 事故直後、ストロンチウム90はセシウム137に対して100分の1程度でしたが、現在は1くらいの比になっています。分析に時間がかかり監視が難しい。地震でタンクが壊れれば、ストロンチウム90によるリスク(危険)が高まります。

 汚染水は、長期的に見れば、液体の状態では不安定で、固体の状態にしないと管理できません。処理することが重要です。

 放射性物質がどこにどれだけあり、どれだけ固定されているか評価されないと、とてもコントロールしているといえません。

 今回の事故は、原子炉がいかに大量の放射性物質をためているかを明らかにしました。どう合理的に処分していくか考えないと事故の処理もできません。

費用は責任論を明確に

立命館大学国際関係学部教授

大島 堅一さん

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 汚染水対策について、与党から国費の投入を含むいくつかの案が出ていますが、これらは明らかに汚染者負担原則からの逸脱です。対策にお金がいらないことになり、モラルハザード(倫理の崩壊)を招いてしまう。

 なぜ国が直接乗り出すのか、論理が不明確で、責任論がないことが非常に問題です。莫(ばく)大(だい)な被害が発生し原因者の賠償能力を超える場合は、責任に応じて払う必要があります。

 一義的には東電が支払う必要があるので、まずは東電の法的処理が必要です。これは、貸し手責任や株主責任を問うことになります。

 二つ目は事故発生責任に基づく費用負担が必要です。政府や他の事業者にも責任があったと言われています。

 三つ目は、新たな事故処理の機関を作って、科学者や技術者が集まって適切な対策をとれるような仕組みを取ることです。

 他の国では電気事業者が変わることは普通です。東電がなくなっても、事業主体が変わるだけで電気はきます。

国や東電の姿勢が障害

衆院議員、日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者

笠井  亮さん

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 国会論戦を踏まえて発言します。第一は、国が、放射能で海を汚さないという確固とした決意を持っているかです。政府の基本方針は、この肝心の大目標が全く定まっていません。安倍首相はどんなに聞いても、海を汚さないと明言しません。

 第二は汚染水問題の現状をどう認識するかです。政府も潜在的リスク(危険)を洗い出すなどと取りつくろっていますが、抜本的対策はこれからです。収束宣言を撤回し、異常事態という共通認識のもとで、抜本対策を作り上げるよう強く求めていきたい。

 第三に、汚染水問題は、国が最優先で総力をあげるべき重要課題です。ところが首相は口では前面に立つと言いながら、再稼働と輸出ありきで、国会を抜け出してトルコ訪問を重ねる始末。国や電力会社などの姿勢が最大の障害です。今こそ、原発の再稼働や輸出のための活動を直ちにやめて、汚染水問題の根本解決と事故収束のために、英知と総力を結集する時です。


志位委員長のあいさつ

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 みなさんこんにちは。私たちの汚染水問題シンポジウムに会場いっぱいのみなさんが参加してくださいまして、ありがとうございます。心からお礼を申し上げます。

 福島第1原発の放射能汚染水の問題は、ますます深刻になっており、放射能汚染水の制御ができない非常事態が続いています。

 いくつかの深刻な事態が進行していますが、その第一は、放射能汚染水の莫大(ばくだい)な量の問題であります。

 福島第1原発内の放射能汚染水の総量は、はっきりしていませんが、少なくともすでに原子炉建屋地下やタンクなど全体で50万トン近い量となっています。この汚染水に含まれる放射能の総量は、原子力規制庁の発表でも、ストロンチウム90でいえば事故直後に大気中に放出されたものの数百倍もの量となっています。しかもこれは日々、増加しています。こうした莫大な放射能を隔離し、管理し、処理するというのは大変に困難な一大事業であります。

 第二は、この問題の抜本的解決が長期にわたる課題となることです。

 先日、1号機格納容器の下の配管から水が漏れている様子が確認され、格納容器本体が壊れている可能性が極めて高いことが判明しました。しかし、現場は、とても人が近づいて作業できるような環境ではありません。今回の確認は、汚染水問題の解決と事故収束がいかに長期にわたる努力を必要とするかを示したものと考えます。

 私たち日本共産党は、放射能汚染水問題について9月17日、「危機打開のための緊急提言」を発表しました。汚染水問題で「国が前面に出る」というならば、少なくとも四つの問題をただし、転換することが必要だと提起いたしました。

 一つ目は、「放射能で海を汚さない」ことを、基本原則として確立することであります。

 二つ目は、放射能汚染水の現状を徹底的に調査・公表し、「収束宣言」を撤回し、非常事態という認識の共有をはかることであります。

 三つ目は、再稼働と原発輸出のための活動をただちに停止し、放射能汚染水問題の解決のために、もてる人的・物的資源を集中することであります。

 そして四つ目は、当事者能力を失った東京電力は破たん処理し、国が責任を持って収束・廃炉・賠償・除染にあたる体制をつくることであります。

 この汚染水問題の解決にあたっては、私たちは原発への態度や将来エネルギー政策の違いをこえて、科学者、技術者、産業界のみなさんの英知と総力を結集した取り組みが何よりも大切だと訴えてまいりました。

 私たちはそのことを、政府にも、国会の代表質問、予算委員会の質問などの場で、直接求めてまいりましたが、政党としても、各界のみなさんとともに汚染水問題の打開の道を探求する場を設けていきたいと考えました。今日のシンポジウムは、そういう立場から呼びかけさせていただいたものであります。

 幸い、各界で活躍されている専門家のみなさんが、パネリストを引き受けてくださった。また会場にも、たくさんの科学者、技術者、産業界のみなさんにご参加いただきました。ぜひ今日は、忌憚(きたん)のないご意見をいただき、ともに知恵を合わせて、この問題の解決の方途を見いだしていきたいと考えております。

 以上、簡単ですが、主催者を代表してのあいさつといたします。どうか最後までよろしくお願いします。