志位和夫 日本共産党

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国会質問

2015年5月30日(土)

「後方支援」=兵たんは武力行使と一体 戦争法案の違憲性浮き彫りに

衆院特別委 志位委員長の質問〈上〉


 日本共産党の志位和夫委員長が27、28両日の衆院安保法制特別委員会で行った質問を2回にわたって紹介します。今回は27日の質疑です。


 志位和夫委員長 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。今日と明日、2日続けて、安倍政権が、「平和安全法制」の名で国会に提出した一連の法案についてただしていきたいと思います。

 安倍政権は、この法案を「平和安全」と銘打っておりますが、わが党は、日本を「海外で戦争する国」につくり変える戦争法案が正体だと考えております。

 多くの問題点がありますが、憲法9条を破壊する三つの大問題について質問します。

志位 「戦闘地域」に自衛隊を派兵すれば、攻撃され、戦闘になるではないか

首相 自己保存型の武器の使用を行う

志位 国際法では「『武器の使用』は武力の行使でない」などという理屈は通用しない

アフガン・イラク派兵のさいの「非戦闘地域」という「歯止め」を外した

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=27日、衆院安保法制特委

 志位 第一は、武力行使をしている米軍等への補給、輸送などの軍事支援――いわゆる「後方支援」の問題です。

 政府提出法案には、武力行使をしている米軍等への「後方支援」を定めた二つの法案があります。「重要影響事態法案」と「国際平和支援法案」であります。

 二つの法案に共通する最大の問題は、これまで政府が「戦闘地域」としていた場所にまで自衛隊が行って軍事支援を行うことになることにあります。これまでの自衛隊の「海外派遣法」と、どこがどう変わるのか。まずパネルをごらんください。(パネル1)

 (パネルに書いた)上がこれまでの活動ですが、2001年のアフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、2003年のイラク戦争に際してのイラク特措法には、自衛隊が活動できる場所を次のように規定しておりました。

 「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる……地域」

 ここで規定されている地域は「非戦闘地域」といわれました。「非戦闘地域」は、第一に、現に戦闘行為が行われていない地域、第二に、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域、という二つの条件を満たした地域とされていました。「非戦闘地域」という「歯止め」があったために、自衛隊の活動は、インド洋での給油活動、イラク・サマワでの給水活動、バグダッドへの空輸活動等に限られました。

 それが「重要影響事態法案」と「国際平和支援法案」ではどう変わっているか。(パネルに書いた)下であります。

 「現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとする。ただし、……捜索・救助活動についてはこの限りではない」

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 これはきわめて重大な変更です。これまでの「海外派遣法」にあった第2の条件――「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」という規定が削除されております。

 「戦闘現場」――その瞬間に戦闘行為が行われている場所でなければ、自衛隊の活動期間中に戦闘行為が行われる可能性がある場所――これまで政府が「戦闘地域」としてきた場所であっても、自衛隊の軍事支援ができるとしています。

 活動内容の点でも、政府の法案では、これまで実施できなかった米軍への弾薬の提供、武器の輸送、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備も実施できるものとなっております。

 まず確認です。総理、こうした変更を行おうとしていることは、間違いありませんね。確認です。

 安倍晋三首相 法律もですね、いままでの法案…法律からですね、今度私どもが出している重要影響事態法や、あるいは国際平和支援法においてはですね、後方支援の考え方については、いま志位委員が説明した…説明したというか、そのパネルに書いてあるのはそのとおりであります。

自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性を認めるか

 志位 お認めになりました。そこで総理にうかがいます。戦闘行為が行われる可能性がある場所まで自衛隊が行くということは、自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性があるということになります。それをお認めになりますね。昨日(5月26日)の本会議で、この質問を私はいたしましたが、総理から定かな答弁はありませんでした。はっきりお答えいただきたい。自衛隊が攻撃される可能性です。

 中谷元・防衛相 後方支援に限りますが、今度、あの、重要影響事態法、また国際平和支援法、これにもとづいて実施する補給、輸送などの支援活動は、まずその性質上、そもそも戦闘の前線のような場所で行うものではなくて、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施するものでございます。これまで戦闘地域とされてきた場所まで行って活動するとの趣旨が、定かではございませんが、いずれにせよ、わが国が行う支援活動は、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないことを明確に規定をいたしております。

 また法律上、部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるように、活動の実施区域を指定することとなっておりまして、いま現在戦闘行為が行われていないということだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することになります。

 万が一、状況の変化により自衛隊が活動している場所が、現に戦闘行為が行われている現場等となりうる場合には、活動の中止…休止、中断を行うこととなります。

 もう一点。自衛隊が武器を使用できるのは、不測の事態に際して、自分や現に…現場に存在する自衛隊員などの生命、身体防護のためやむをえない必要がある場合のみでありまして、そのさいの武器使用も厳格な比例原則にもとづいて、必要な限度に限られており、人に危害を加えるもの、正当防衛、また緊急避難に該当する場合です。したがって、武器を使って反撃しながら支援を継続することにはなりません。

 いずれにしても、自衛隊が戦闘行為を行う、また自衛隊の活動が戦闘行為になるということはないということです。

「自衛隊の活動期間について戦闘行為がないと見込まれる場所」など法案に一言もない

 志位 武器の使用のことまで聞いていないんでね(笑い)、聞いていないことまで答える必要はないんです。

 いまのご答弁でも、それから昨日の総理の本会議でのご答弁でも、自衛隊の活動の実施区域を指定するさいに、「自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所」を指定するといっております。いまもおっしゃいました。昨日、総理もおっしゃいました。しかし、そんなことは、法案には書いていないんですよ。法案にはひと言も書いていない。法案に書いてあるのは、「円滑かつ安全に実施できるように」(「重要影響事態法案」では第6条の3、「国際平和支援法案」では第7条の3)としか書いていない。

 今度は総理にうかがいます。総理は、昨日の本会議での答弁で、いまの大臣の答弁でもありましたが、「自衛隊が活動している場所が、戦闘現場になる場合」があると認めました。法案でも、自衛隊が活動している場所で「戦闘行為が行われるに至った場合」を想定して、あれこれの対応方針を明記しております。自衛隊が活動している場所が戦闘現場になることを想定しているということは、自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性を想定しているということになるじゃありませんか。

 自衛隊が行う弾薬の補給、武器の輸送等の「後方支援」――兵たんが、格好の軍事目標になるということは、軍事の常識であります。自衛隊は攻撃されないという保障でもあるんでしょうか。総理、はっきりお答えください。私が、聞いているのは、自衛隊自身が攻撃される可能性を聞いているんです。それを否定できますか。

 首相 その可能性がですね、100%ないと私、申し上げたことはございません。そこで、先ほど、昨日もお話をさせていただいたわけでありますが、新たな仕組みのもとでもですね、部隊の安全等を考慮して、いま現在、戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所をですね、実施区域に指定することとなります。もちろん、しかしだからといってですね、絶対にないわけではありませんから、そのときには、部隊の責任者が判断して、一時休止する、あるいはその後ですね、退避するという、そういう判断は当然行わなければならないわけでございます。という意味において申し上げているわけでございます。

 志位 総理は、自衛隊の部隊が攻撃される可能性を否定しませんでした。また繰り返して、「自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所」を(実施区域に)指定するとおっしゃるんですが、法律にないんですよ、法律に。そういう場所を指定するというんだが、法律に書いてあればいいけど、法律にはない。それははっきり言っておきたいと思います。

自衛隊が武器使用すれば、相手はさらに反撃し、まさに戦闘をすることになる

 志位 それでは、次に、自衛隊自身が攻撃されたらどうするんですか。必要な場合には、武器の使用をすることになりますね。総理は、昨日の本会議で、私の質問に対する答弁で、「自分やともに現場に所在する自衛隊員などの生命や身体の防護のためのやむを得ない必要がある場合」には、「武器を使用できる」と答弁しました。間違いありませんね、確認です。

 首相 これは、自己保存型のですね、武器の使用になるわけでありまして、危害要件については、当然ですね、これは正当防衛と緊急避難に限られるわけでございます。

 志位 自己保存型に限られるとおっしゃいましたけれども、武器の使用はするというご答弁でした。

 さらに総理にうかがいます。自衛隊が、いったん武器の使用をすれば、相手方はさらに反撃をする。そうなれば、自衛隊は応戦することになります。撃ち合いが始まります。自衛隊は、相手方が、攻撃を中止する、あるいは逃走するまで、武器の使用を続けることになります。自衛隊がまさに戦闘をすることになるではありませんか。

 昨年5月の(衆院)予算委員会の私の質問に対して、総理は、「イラク戦争やアフガニスタン戦争のような場合に、武力行使を目的にして戦闘に参加することは決してない」と繰り返しました。いまでも繰り返しておられます。しかし、たとえ武力行使を「目的」にしていなくても、補給や輸送などの「後方支援」が目的であったとしても、これまで政府が「戦闘地域」としてきた場所にまで行って活動すれば、結果としてまさに戦闘を行うことになるではありませんか。そのことを否定できますか、総理。

 防衛相 この法律に基づいて行う活動におきましては、補給、輸送などの支援活動でございますが、そもそも前線のような場所で行うものではなくて、危険を回避して活動の安全を確保した上で実施をするものでございます。自衛官が武器を使用できるのは、不測の事態に際して、自己保存の権限による場合であるのみでありまして、武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことはございません。いずれも、自衛隊が戦闘行為を行う、また自衛隊の活動が戦闘行為になるということは、ないわけでございまして、支援活動の成果、実施が結果として武力行使となるということはないということでございます。

 首相 いま大臣から答弁させていただいたようにですね、先ほども答弁いたしましたが、いわば自己保存型の武器の使用しかできないわけでございまして、そのなかにおいては、もし攻撃を受けた場合にはですね、そこで応戦するということではなくて、直ちに退避に…応戦しながら業務を継続するということではなくですね、直ちに退避に移るわけでございます。

 志位 いろんなことをお答えになっていますが、自己保存型だったら「武器の使用」をするというのがご答弁なんですね。

イラクには、対戦車弾、無反動砲、重機関銃を携行――これが戦闘でなくて何なのか

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 志位 「武器の使用」といいますが、では具体的に聞きましょう。現実に自衛隊がイラク・サマワに持って行った武器はどのようなものでしたか。具体的に答えてください。持って行った武器。

 深山延暁・防衛省運用企画局長 お答え申し上げます。イラク特措法に基づきまして、イラク南部サマワに派遣された陸上自衛隊の部隊は、部隊の安全確保のために拳銃、小銃、機関銃、機関銃は2種類でございました。無反動砲、個人携帯対戦車弾を携行してまいりました。

 志位 いま、具体的にご答弁があったんですけれども、無反動砲も持って行っていますね。無反動砲。

 企画局長 はい。ご指摘のとおり、84式無反動砲を持って行きました。

 志位 いま、初めて、持って行った武器の内容が示されました(パネル2)。パネルにどんなものか写真を掲げております。持って行った武器は、ピストルや小銃にとどまらないんですよ。110ミリ対戦車弾、84ミリ無反動砲、12・7ミリ重機関銃など、文字通りの重装備ですよ。「人道復興支援」といわれたイラクのサマワでも、これだけの武器を持って行ったんです。

 「戦闘地域」での「後方支援」となれば、さらに強力な武器を持って行くことになるでしょう。必要な場合は、こうした武器を使って反撃するということになります。相手方が、仮に戦車で攻撃してきて、必要に迫られた場合には、自衛隊はこの110ミリ携帯対戦車弾を使って反撃するということになるでしょう。これが戦闘でなくて何なのか。こういう武器を持って行っているんですよ。場合によっては使うから持って行っているんです。総理いかがですか。今度は総理です。戦闘でなくて何なのか、総理。

 首相 まず、そもそもですね、この後方支援をする目的を考えなければならないわけでありまして、重要影響事態については、まさにわが国の平和と安全を確保するためにですね、後方支援を行うわけであります。わが国の平和と安全が脅かされる危険のなかにおいて行うということでございます。

 そして、国際平和支援法につきましては、これはですね、まさに国連憲章の目的にかなうという、そういう目的に対して行うということでございます。

 そこで同時にですね、繰り返しになりますが、後方支援を行う上においてはですね、安全な場所を選んで行うと、これはいままでのですね、基本的に非戦闘地域で活動を行うという考え方と基本的には同じでありますが、いままでの経験等をもとにですね、整理をしなおしたわけでございます。

 しかし、武器の使用については、先ほど申し上げましたように、任務遂行型ではなくて、自己保存型でありますし、危害要件もですね、正当防衛かあるいは緊急避難に限られるなかで行っていくということでございます。

 そこで、万万が一ですね、襲撃にあった場合は、この、応戦をし続けて、任務を続けるということではなくてですね、後方支援任務を続けるということではなくて、直ちにそれは退避するということになるわけでございます。

 志位 私が聞いたのは、武器の使用をするというところまで総理はお認めになった。安全な場所を選んでやるといったけれども、それでも自衛隊が攻撃される可能性もお認めになった。そのときは武器の使用をするということもお認めになった。持って行った武器はこういうものです。こういうものを使って戦闘といえないのかと聞いたんです。ぜんぜん答えていない。お答えください。まさに戦闘じゃないですか。

 防衛相 はい。派遣をいたしますので、隊員の安全を確保する必要がございます。あくまでも、これは必要最小限でありますし、また自己保存のための武器使用ということで規定をされております。

 また、その上、そういった近傍において戦闘行為等が発生した場合、予測される場合におきましては、部隊長が活動を一時休止、または回避をいたしますし、また安全に活動するために中断をしたりするわけでございます。

「『武器の使用』は武力の行使ではない」など通用しない―憲法9条に違反する

 志位 自己保存のための武器の使用だから武力の行使にあたらないということをおっしゃった。戦闘にならないんだということをおっしゃいました。

 ここに私が、一昨日(5月25日)に、外務省に提出させた文書がございます。「国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義があるわけではございません」。これが明確な回答であります。

 つまり、国際法上では、「武力の行使」とは別の「武器の使用」という概念や定義そのものが存在しないんです。ですから、「自己保存のための武器の使用だから戦闘じゃないんだ、武力の行使じゃないんだ」という理屈は、国際社会ではおよそ通用するものではないということをいっておきたいと思います。

 だいたい、いま問題になっているのは、自衛隊が国内の駐屯地で襲撃を受けた。その時に、自己防護のために武器を使用するという話じゃないんですよ。海外で、武力行使をしている米軍を、「戦闘現場」の近くまで行って支援している。その時に自衛隊が相手方から攻撃された。それへの反撃が武器の使用で武力の行使じゃない、こんな議論はおよそ通用しない。憲法9条に違反する武力の行使そのものだといわなければなりません。

志位 イラク派兵の実態は戦闘の一歩手前――「殺し、殺される」危険が決定的に高まる

首相 (危険について語らず「隊員の安全確保」を繰り返す)

志位 「隊員の安全確保」を言うのは、全くの自己矛盾、荒唐無稽だ

陸自の宿営地には14回もの攻撃、空自の輸送機は命がけの回避行動

写真

(写真)安倍内閣を追及する志位和夫委員長(左)=27日、衆院安保法制特委

 志位 さらに私は、具体的な事実に照らして、ただしていきたいと思います。

 自衛隊のイラク派兵は、「非戦闘地域」への派兵を建前としておりました。しかし、実際に起こったことは何だったか。

 陸上自衛隊は、対戦車弾や重機関銃など、かつてない重武装でサマワに展開しました。宿営地を高さ3メートルの土塁で囲み、その外側に柵や有刺鉄線を設置し、宿泊施設をコンクリート壁と鉄板で固めるなど、いわば要塞(ようさい)化しました。それでも2年半の間に、陸上自衛隊に対するロケット弾や迫撃砲弾などによる攻撃は、少なくとも14回、23発に及んでいます。うち4回、4発のロケット弾が宿営地の敷地内に落下し、コンテナを貫通したこともあります。宿営地外で移動中の陸上自衛隊の車両が手製の遠隔操作爆弾による襲撃を受けたこともありました。

 昨年4月、NHK「クローズアップ現代」で、「イラク派遣 10年の真実」と題して、自衛隊が撮影した1000本に及ぶイラク派遣の記録をもとに、その実態を明らかにした番組が放映されました。

 番組ではまず、宿営地に撃ち込まれた迫撃砲の着弾地点を映し出しました。着弾地点から数メートルにわたって土地がえぐられている、迫撃砲の殺傷力の高さを物語る生々しい映像であります。

 さらに番組では、当時、陸上自衛隊のトップを務めていた元統合幕僚長の先崎(まっさき)一氏のインタビューを放映しました。先崎氏は、「政治的には非戦闘地域といわれていたが、対テロ戦が実際に行われている地域への派遣で、派遣部隊から見れば何が起こってもおかしくないと。戦闘地域に臨むという気持ちを原点に置きながら、危機意識を共有して臨んだ」「忘れもしないですね、先遣隊、業務支援隊が、約10個近く棺(ひつぎ)を準備して持っていって、クウェートとサマワに置いて。……自分が経験した中では一番ハードルの高い、有事に近い体験をしたイラク派遣だったと思います」、こう語っています。

 航空自衛隊は、クウェートの空軍基地を拠点に、C130輸送機で、バグダッドなどへの空輸活動を行い、米軍を中心とした武装した多国籍軍などを空輸しましたが、この活動はつねに攻撃にさらされる危険極まりないものでありました。イギリス軍のC130輸送機が、バグダッド近郊を飛行中、武装勢力によって撃墜され、乗員全員が死亡するという事態も起こっておりました。空自のC130輸送機もバグダッド空港に駐機中、4発の迫撃砲弾がC130輸送機の頭上を飛び越え、空港の敷地内に撃ち込まれたこともあります。空自の輸送機がバグダッド上空にくると、携帯ミサイルに狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴る事態が頻発しました。「3回飛べば1度ぐらいミサイル警告システムが作動した」と証言する空自幹部もいます。機体を左右に急旋回させ、あるいは急上昇、急降下させる命がけの回避行動が必要だったと報道されました。

 総理にうかがいます。「非戦闘地域」が建前だった自衛隊のイラク派兵でしたが、実態は戦場に近かった。自衛隊員の犠牲者が出ず、自衛隊が1発も銃弾を撃つことなく終わったのは、ほとんど奇跡といっていいことだと、私は思います。「非戦闘地域」が建前であっても、先崎元統合幕僚長の言葉を借りれば「なにが起こってもおかしくない」、攻撃を受け、戦闘に至る、その一歩手前が現実だったのではないですか。総理にそうした認識はありますか。昨日(5月26日)の本会議で、私は、この質問を総理に投げかけましたが、定かな答えがありませんでした。私は、イラク派遣の現実についての認識を聞いております。はっきりお答えください、総理。

 首相 イラク派遣についてもですね、非戦闘地域ということをいわば確定してですね、確定してその任務を行っている期間を通じて、戦闘地域…戦闘地域とはならないという地域を選んで、自衛隊が駐留をし、そして復興支援活動にあたったわけでございます。まさに、復興支援活動にあたる上において、先崎さんはですね、自衛隊員の心構えと覚悟についてお話をされたんだろうとこのように思います。もちろん、ここは全く安全な地域では、まったく安全だということではないわけであります。当然、危険がともなう仕事であります。

 しかし、その中においてもですね、この法令にしたがって、われわれは非戦闘地域であるということを確定した区域において、自衛隊が作業を行ってきたと、復興の支援を行ってきたと、ということでございます。

 そして、それはイラクのですね、復興支援には大いに役立ったのは事実であり、イラクの人々にも感謝されているとこのように思います。

当時の防衛大臣は「刃のうえで仕事をしている」と答弁――こういう認識があるか

 志位 私は、イラクの自衛隊の派遣(の実態)が、攻撃を受け、戦闘に至る一歩手前だったという認識はないのかときいたんですが、お答えはありません。

 この問題は、当時の久間防衛大臣が、航空自衛隊の活動について、国会で、「一歩間違うと本当に人命に影響するような状況、見方を変えれば、刃(やいば)の上で仕事をしているようなもの」と答弁しておられます。当時の航空幕僚長だった吉田正氏は、「私は首相官邸で『万一撃たれても騒がないでほしい』『はしごを外さないでほしい』と求めた。テロと同じで、どこで攻撃を受けるかわからない活動だからだ」と語っております。

 当時の防衛大臣が「刃のうえで仕事している」、あるいは航空幕僚長が「万一撃たれても騒がないでほしい」「どこで攻撃されるかわからない活動」だったと(言っている)。こういう認識があるかどうか聞いているんです、総理。

 首相 当時もですね、私は官房副長官として官邸にいたわけでございますが、小泉総理も自衛隊を派遣する上において、安全な場所に派遣するという気持ちはもちろん、これは、さらさらなくてですね、まさに危険がともなう仕事の中において、自衛隊の諸君にイラク復興の支援のための活動をしてもらうと、こういう思いで小泉総理も派遣を命じたわけでございますが、しかし同時にですね、派遣をする上においてはですね、活動を通じて、非戦闘地域、非戦闘地域という概念においては、武力行使と一体化しないという概念において導き出された、これは概念でございますが、そんなかにおいて、期間を通じて非戦闘地域である。この非戦闘地域であるということは、いわば私たちがこの日本の中で享受しているような安全な状況とは、これは違うわけでありまして、だからこそ日頃訓練をしている自衛隊の諸君にその任務を担ってもらうわけであります。

 同時にですね、同時に、そういう状況になれば、退避、避難をすると、いうことでございまして。今回の法令、法律におきまして、法案におきましても、そういう事態になれば部隊の指揮官が判断する場合もありますし、また防衛大臣が判断する場合もありますが、避難をしたり、一時中断したり、避難をすると。あるいはそういう事態になる可能性があるという予測をした段階でそういう避難を、中断をすると、いう確実な判断をすることも必要だろうとこのように思います。

柳沢元内閣官房副長官補「必ず戦死者が出る」―この発言は重いものがある

 志位 私は、イラクへの自衛隊派遣の実態がどうだったかの認識を聞いたんですが、お答えになりません。いまの答弁では答えてない。

 「非戦闘地域」が建前でも、戦闘に至る一歩手前でした。それは当時の、当事者たちの発言で明らかです。この現実を無視して、これまで「戦闘地域」とされてきた地域での活動を可能にする。しかもこれまでできなかった弾薬の提供、武器や弾薬の輸送もできるようにする。戦闘部隊への補給を断つために、弾薬や武器を輸送する自衛隊は真っ先に攻撃対象とされるでしょう。自衛隊が現実に攻撃され、「殺し、殺される」危険が決定的に高まるんじゃありませんか。

 イラク戦争の当時、首相官邸で自衛隊派兵の中心を担った、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、「朝日」のインタビューでつぎのようにのべています。

 「当時、航空自衛隊は輸送任務でバグダッド空港まで行きました。新たに作る恒久法では、そこから先の戦闘部隊がいる場所まで輸送できるようになる。それは非常に緊急性の高い輸送です。政府案は戦闘が起きたら輸送を中断する仕組みになっていますが、戦闘を行っている部隊の指揮下に入ることになれば、輸送を中断するわけにはいかないでしょう」

 「自衛隊派遣の前提だった『非戦闘地域』という概念は、憲法上のつじつま合わせだけではなかったと思います。実質的に自衛隊を戦闘部隊の指揮下に入れず、直接の戦闘に巻き込ませないという意味があった。この概念を廃止して活動範囲を広げれば、今までより確実にリスクは高まります。イラクでは何とか戦死者を出さずに済みましたが、あれ以上のことをやれば必ず戦死者が出ると思います」。こういわれています。

 柳沢さんは「必ず戦死者が出る」とまで断言されています。イラク派兵の中心を官邸にあって担った、この方の発言は、私は重いものがあると思いますよ。総理、自衛隊員に戦死者が出るようになるのは避けがたいと考えますが、いかがでしょうか。

兵たん部隊が全体の統一した指揮下に入るのは軍事の常識

 首相 柳沢さんはですね、重大な間違いを犯しておられます。まず自衛隊がですね、この輸送して、届ける先の部隊のですね、指揮下に入ることありません。これは明確に申し上げておきたい。柳沢さんはなんでこんな初歩的なことをわからずに、べらべらしゃべっているのかですね、私も大変驚いている。これは極めて重要なことですよ。指揮下に入るか入らないか。入ることはないんですから。自衛隊が独自に判断してですね、そういう状況になれば直ちに退避をする。退避できないのと指揮下に入ってしまうのとは、天と地の違いであります。ですから、彼の証言はまったく意味がない話だろうということはまずはっきりと申し上げておきたいと思います。

 その上においてですね、先ほどらい、中谷大臣も答弁をしておりますように、しっかりとわれわれはですね、非戦闘、戦闘現場ではない、そしてその任務を実行する期間において、そういう戦闘現場となることのない区域を指定して、そこで活動をするわけでございます。ですからそういう意味においては、しっかりとですね、自衛隊の安全を確保、最大限確保しながらですね、われわれはこの後方支援の任務に当たる、当たってもらうわけでございます。

 志位 自衛隊は指揮下に入らないと、言われましたけれども、兵たん部隊が全体の指揮下に入るというのは軍事の常識ですよ。兵たんをやる部隊が、勝手にどこかにものを置いて、それですむわけがない。統一した指揮下に入るというのは、これは軍事の常識です。日米新ガイドライン(軍事協力指針)でも、「同盟調整メカニズム」とありますが、これは結局、米軍の指揮下に入るということですよ。

 総理は、「安全確保」と言うこと繰り返します。しかし、柳沢さんはこうもおっしゃっています。

 「政府、与党は安保法制に『自衛官の安全確保』を書き込めば、安全になると思い違いをしている。安保法制では自衛隊の活動地域はこれまでの『非戦闘地域』から『非戦闘現場』になる。つまり活動地域が大幅に拡大し、最前線まで武器や弾薬を輸送できる」「(『自衛隊員の安全確保のための必要な措置』というが)法改正で、隊員に与えられる任務の危険性は格段に高くなる。間違いなく戦死者が出ますよ。矛盾も極まれりで、これが荒唐無稽でなくて何でしょうか」。こういわれております。

 私は、今日、具体的な法案の仕組み、そしてイラク派兵の実態に照らして、自衛隊が「殺し、殺される」ことになる危険についての認識をうかがいました。それについて、これだけ聞いても総理はリスクを語ろうとしない。これはあまりに無責任で不誠実な態度じゃないですか。自衛隊の活動地域を、これまで政府が「戦闘地域」としていた地域へと大幅に拡大しておきながら、「隊員の安全確保」をいうのは、全くの自己矛盾であり、荒唐無稽であり、ブラックジョークの類いだといわなければなりません。

志位 アフガン・イラク帰還自衛官の自殺――活動拡大すればさらに甚大な負担と犠牲が

首相 (質問に答えず「隊員の安全確保」を繰り返す)

志位 戦争でまっさきに犠牲にされるのは若者――若者を戦場に送るな

アフガン・イラク帰還自衛官のうち54人が自ら命を絶っている

 志位 さらに聞いてまいります。

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 これまで、自衛隊員の戦死者は出ていないものの、犠牲者が出ていないわけではありません。アフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、イラク戦争に際してのイラク特措法に基づいて派遣された自衛官のうち、これまでに自ら命を絶った自殺者はそれぞれ何人か、防衛省、報告されたい。

 真部朗・防衛省人事教育局長 いまお答え申し上げます、平成26年(2014年)度末の現在、その時点でございますが、イラク特措法に基づきまして派遣された経歴のある自衛官のうちですね、陸上自衛官が21名、航空自衛官が8名、計29名。それからテロ特措法に基づいて派遣された経歴のある自衛官のうち、海上自衛官が25名、これは、統計の関係で平成16年(2004年)度以降でございますが、以上ですね、29名と25名で、足し合わせますと54名が帰国後の自殺によって、亡くなられております。一般に申し上げますと、自殺の原因はさまざまな要因が複合的に影響しあって発生するものでございます。従いまして、個々の原因について特定することは困難な場合がおおございます。自殺した自衛官についても、海外派兵との因果関係、こういったものを特定するのは困難な場合が多いということを、付言させていただきたいと思います。

 志位 54人の自殺ということが報告されました。これは深刻な数字であります。

NHK「クローズアップ現代」――心の不調を訴えた隊員が1割から3割も

 志位 さきに紹介した昨年4月放映されたNHK「クローズアップ現代」の「イラク派遣 10年の真実」では、イラク派遣が「隊員の精神面にも大きな影響を与えていた」として、派遣自衛官のなかでの自殺者の問題を、生々しくとりあげました。

 番組では、イラク派遣から1カ月後に自殺した20代の隊員の母親のインタビューを次のように放映しました。

 「派遣中の任務は宿営地の警備でした。20代の隊員を亡くした母『(息子が)「ジープの上で銃をかまえて、どこから何が飛んでくるかおっかなかった、怖かった、神経をつかった」って。夜は交代で警備をしていたようで、「交代しても寝れない状態だ」と言っていた』。息子は帰国後自衛隊でカウンセリングを受けましたが、精神状態は安定しませんでした。母親は、息子の言動の異変を心配していました。20代の隊員を亡くした母『(息子は)「おかしいんじゃ、カウンセリング」って。「命を大事にしろというよりも逆に聞こえる、自死しろ」と、「(自死)しろと言われているのと同じだ、そういうふうに聞こえてきた」と言ってた』。この数日後、息子は死を選びました」。こういう内容が放映されました。

 番組では、現地に派遣された医師が、隊員の精神状態を分析した内部資料を紹介しました。内部資料には、派遣されたおよそ4000人を対象に行った心理調査の記録もありました。睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も1割以上。中には3割を超える部隊もあったことが分かりました。

 これは、深刻な問題だと思うんですよ。総理、「非戦闘地域」が建前の活動でも、これだけの若者が犠牲になり、また心に傷を負っております。これまで政府が「戦闘地域」としてきた地域まで活動地域を広げるとなれば、これをはるかに超える甚大な負担と犠牲を強いることになることは、私は避けがたいと考えますが、総理いかがでしょうか。

 首相 私がかつて官房長官のときに、自衛隊において、他の公務員と比べても自殺率が高いという話を聞きまして、そのカウンセリング等、対応とるように指示したわけでございますが。いずれにいたしましても、そうした形で死を選んだ方々がおられる、大変胸の痛む話であります。しかしそこでですね、こうした活動をおこなっていく。たしかに緊張感をともない、ともなう、わけでございます。そのなかで常に自衛隊の諸君は、さまざまな現場でリスクを負いながら、国民の命と幸せな暮らしを守るために、任務をまっとうすべく、全力をつくしているわけでございます。

 今回のですね、この法案における、後方支援活動とですね、いままでの活動とを比べるなかにおいてですね、先ほども申し上げましたように、非戦闘地域という概念をですね、非戦闘現場と改めたわけでございますが、しかし活動する区域については、実際に活動する区域には午前中の答弁でも申し上げたわけでありますが、例えば自衛隊が宿営する場所、あるいは実際に活動する区域についてですね、その活動している区間、期間ですね、安全が十分に確保されているという、場所で活動するということになるわけであります。いままでは非戦闘地域という、例えば、サマワであればサマワ全体を半年なら半年指定していたわけでございますが、今回は実際にですね、活動する区域を指定すると、いうことにおいてですね、より柔軟性をもつということになるわけでございますが、いずれにせよ実際に戦闘現場になる、そういう危険性があるときには、中止したり、あるいは退避をすると、こういうことになっているわけであります。

 志位 あのね、「自衛隊の安全確保」の話を聞いたんじゃないんですよ。こういう自衛官が自ら命を絶つという深刻な事態が起こっている。自衛隊の活動領域を広げたら、もっと深刻になるんじゃないかと聞いたんですが、全く答えられませんでした。

米国では、1日平均22人、年間8000人もの帰還兵が自殺、一大社会問題に

 志位 米国には、イラク戦争とアフガニスタン戦争の帰還兵が200万人以上おります。うち60万人が戦地で経験した戦闘や恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患っております。そして米国政府によると、1日平均22人、年間8000人もの帰還兵が自殺しており、米国の一大社会問題となっております。イラクとアフガンの戦場での戦死者よりも年間の自殺者が上回るという異常事態であります。帰還兵の支援は、ワシントン・ポスト紙では「米国の次の戦争」といわれております。昨年12月、今年2月の2度にわたって、「兵士自殺防止法」が制定されているほど、事態は深刻になっております。PTSDの原因は、戦場で命を奪われる恐怖とともに、戦場で相手の命を奪ったこと――自爆テロだと判断し発砲したところ、無辜(むこ)の民間人を殺してしまった――などへの心の痛み、苦しみによるものが多く、深刻なものだと報じられております。

 こうした苦しみを、日本の若者にも押し付けようというのですか。これを聞いているんです。日本の若者を戦地に派兵し、「殺し、殺される」戦闘をさせる。心身への深刻な傷痕ははかりしれないものですよ。これを聞いているんです。この認識はどうでしょう。

 防衛相 まず、派遣する際における、安全につきましての対応は、さらに大きくしていかないといけないと思います。今ご指摘の通りですね、海外派兵は、非常に過酷な環境で行われておりますので、精神的な負担等につきましてはクールダウンと申しますけれども、さまざまな措置を講じまして、隊員のメンタルヘルスケアの機関を充実させていきたいと思います。

 志位 私は、米国の実態を引いて、この深刻な事態を示しました。戦争で真っ先に犠牲にされるのは未来ある若者です。若者を戦場に送るわけにはいかないということを強くいっておきたいと思います。

志位 兵たんは武力行使と一体不可分、戦争行為の不可欠の一部ではないか

首相 (質問に答えず「兵たんは安全が確保されている場所で行う」)

志位 「武力の行使と一体でない後方支援」というゴマカシはいよいよ通用しない

兵たんは、戦時国際法上、軍事攻撃の目標にされる

図

 志位 さらにここで私は、「後方支援」の本質論を聞いていきたいと思います。

 そもそも政府の法案で、「後方支援」と呼んでいる活動――弾薬や燃料などの補給、武器・弾薬・兵員などの輸送、壊れた戦車の修理、傷病兵の医療、通信情報などの支援などの活動は、国際的には兵たんと呼ばれている活動であります。

 「後方支援」という言葉は、日本政府だけが使っている造語であって、国際的には兵たん、「ロジスティクス」と呼ばれております。

 だいたい、4月に日米両政府が交わした、(日米)新ガイドライン(軍事協力指針)でも、日本語では「後方支援」ですが、英文は「ロジスティック・サポート」となっている。「ロジスティック」には、前方とか後方などという含意はありません。

 そこでこの兵たんが、国際的にどのように扱われているか。戦時国際法を見てみたいと思うんです。戦後、国連憲章のもとで、戦争と武力行使は一般的に禁止されました。しかしそのもとでも、国際的な武力紛争は繰り返されました。そこで国際的な武力紛争が起こった際に、戦争の犠牲者を保護する、文民や民用物を保護することが必要とされました。こうしてつくられたのが、1949年のいわゆるジュネーブ4条約「戦争犠牲者の保護に関する条約」と、1977年の「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第1議定書)」であります。「追加議定書」は日本も含めて、すでに世界171カ国が批准し、国際的に確立したルールになっています。パネルをご覧ください(パネル3)

 「追加議定書」は、第52条に「民用物の一般的保護」という条文があります。読み上げます。

 「第52条 民用物の一般的保護

 1 民用物は、攻撃又は復仇(ふっきゅう)の対象としてはならない。民用物とは、2に規定する軍事目標以外のすべての物をいう。

 2 攻撃は、厳格に軍事目標に対するものに限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であって、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る」

 ここでは「物」という言葉がありますが、(「追加議定書」の)コマンテール(注釈)では、この「物」には当然部隊も入るということが、解釈として言われております。

 私は、1999年3月26日の(衆議院)ガイドライン特別委員会で行われた周辺事態法案の審議において、周辺事態法で自衛隊などが行う「後方地域支援」――軍事活動を行っている米軍にたいする補給、輸送などの活動が、このジュネーブ条約の「追加議定書」の52条で第1項の文民、民用物として保護の対象になるものか、それとも、第2項の軍事目標とされるものか、どちらに仕分けされるものなのかをただしました。この質問に対して、当時、外務省東郷条約局長は、私の質問の最後ではっきりと答弁をしております。どういう答弁を行ったか。その該当箇所を、外務省、読み上げていただきたい。

 平松賢司・外務省総合外交政策局長 お答えいたします。先ほどの答弁でございますけども、当時の外務省条約局長は、ご質問の第52条、これはどういう趣旨かと申しますと、これは民用物への攻撃の禁止を趣旨とするものでございまして、一般的に申し上げれば、自衛隊の艦船、航空機等は国際法上、民用物というふうには考えられないところでございまして、そういう意味では、ご指摘の第2項のほうに該当するというのはむしろ当然のことではないかと思いますと、答弁しております。

 志位 そういう答弁で(当時の質疑が)終わっているんですね。つまり自衛隊が行う、当時は「後方地域支援」について聞いたわけですが、これは攻撃目標になると(答弁した)。それは、兵たんというのはですね、戦争行為の不可欠の一部だと、武力攻撃と一体不可分のものだということを示していると思うんですよ。

 兵たんは、「追加議定書」の第52条でいう、「軍事活動に効果的に資する」活動であって、戦時国際法上、軍事攻撃の目標にされる。兵たんが、国際法上、軍事攻撃の目標にされるということは、兵たんが戦争行為の一部であり、武力行使と不可分の活動だと国際社会でみなされていることを意味するものにほかなりません。

米『海兵隊教本』―「兵たんは戦闘と一体不可分、戦争行動の中心構成要素」

 志位 いま一つ、私が提示したいのは、米海兵隊が作った『海兵隊教本』であります。その(『教本』のうち)ロジスティクス――兵たんの項をここに持ってまいりました。現在使われているものです。

 (『海兵隊教本』は)兵たんについての冒頭部分で、「われわれのドクトリンは、兵たんが戦闘と一体不可分であると認識している」と強調したうえで次のように述べております。読み上げます。

 「兵たんはいかに重要か。兵たんは、軍事作戦のいかなる実施の試みにおいても不可欠な部分である。……兵たんなしには、計画的で組織的な活動としての戦争は不可能である。……兵たんなしには、部隊は、戦場にたどりつけない。兵たんがなければ、武器は弾薬なしになり、車両は燃料なしとなり、装備は故障し、動かないままとなり、病人や傷病兵は治療のないままになり、前線部隊は、食料や避難所や衣料なしに過ごさなければならない」

 兵たんの重要性について非常に分かりやすく書かれております。

 次に、「兵たんと戦争」という項があります。

 「兵たんと戦争。兵たんは戦争の一機能であるがゆえに兵たんシステムとそのシステムを作動させる部隊及び要員は、暴力及び危険の対象となる。……兵たんの部隊、設備、施設は……軍事攻撃の格好の標的であることを認識することが重要である」

 先ほど総理は、兵たんというのは安全なところでやるのが常識なんだというふうに言われました。しかし、この『海兵隊教本』には別のことが書いてあるんですよ。戦闘部隊というのはいろんなところに動ける。だから柔軟性がある。しかし、兵たんというのは、これは計画的にやらなければならない。だからより軍事攻撃の格好の標的になる。こうした軍事の常識がはっきり述べられております。

 そして結論です。

 「結論。兵たんは戦闘と一体不可分である。兵たん活動は軍事行動の不可欠の一部である。……兵たんはいかなるまたすべての戦争行動の中心構成要素である」

 非常に明瞭であります。

 総理にうかがいます。総理は、昨日の本会議での私の質問に対して、「わが国が行う後方支援は他国の武力の行使と一体化することがないように行うものです。このようなことから、武力行使と一体不可分というご指摘は当たりません」と答弁されました。

 しかし、総理が何と言おうと、自衛隊が支援する米軍が、兵たんは武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であり、戦争の中心構成要素だと、ここまで言っているんです。これは、アメリカがこう言っているんです。これが兵たんの本質じゃないですか。

 首相 確かにですね、いま志位委員がご紹介されたように、兵たんというのは重要なんですよ。重要であるからこそ、安全を確保しなければいけない。つまり兵たんの安全が確保できないようであればですね、作戦行動というのはもう成り立たないわけであります。ですから、われわれが支援するのは、いわばしっかりと兵たんの安全が確保されている場所において、いわば後方支援をするわけであります。食料等々をですね、届けていく。それが奪われてしまう、攻撃されて奪われてしまったら、これはもう相手に渡るわけでありますから、だからこそですね、また後方支援を受けている間は攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)であるという考え方のもとに、しかし、これをちゃんと安全を確保しましょうという考え方でもあるんだろうと思いますよ。

 後方支援に際しては、危険を回避し、安全を確保することは当然でありまして、むしろ軍事的に合理性があると思います。これは同時に後方支援を十分に行うためにも必要なことでありまして、危険なまさに場所にですね、たくさんの物資を届けるというのは敵に届けてしまうというようなことになってしまうわけでありますから、そういうところでいわば後方支援をしないというのはむしろ常識であるというのは繰り返し申し上げてきたわけでありますが、あえてまた申し上げたいとこう思うわけでございまして。まあそんなかでおいて先ほど答弁させていただいておりますように、戦闘現場ではない場所、そして活動を通じて戦闘現場ではない安全を十分に確保できるということについてですね、しっかりと見極めながら活動を行っていくことに区域を設定していくことになるわけでございます。

質疑を通じ、憲法9条に違反する違憲立法であることは明瞭となった

 志位 総理はね、これだけ議論したのに、またね、同じことを繰り返すんです。「安全確保をします」と。しかしね、これは議論してきたじゃないですか。これまでは「非戦闘地域」でしかやっていけないという「歯止め」があった。これを廃止する。そして、「戦闘現場」でなければ、これまで政府が「戦闘地域」と呼んでいたところまで行って、活動することになる。そうすれば、自衛隊が攻撃される可能性がある。そのことを総理はお認めになりました。攻撃されたら武器の使用をする。これもお認めになりました。これは戦闘になるんじゃないかということを私は提起してまいりました。ですから、まさに、これは議論を通じて、自衛隊のやる「後方支援」というのは戦闘になるということがはっきりしたというのが、この議論の到達点なんですよ。

 そして、兵たんというのは、いま海兵隊の『教本』を示しましたが、戦争行為の不可欠の一部であり、武力の行使と一体不可分のものです。だから軍事攻撃の目標にされる。これが世界の常識であり、軍事の常識です。「武力の行使と一体でない後方支援」など、世界ではおよそ通用するものではありません。

 なお、ニカラグア事件に関する1986年の国際司法裁判所の判決は、「兵器または兵たんもしくはその他の支援の供与」について、「武力による威嚇または武力の行使と見なされることもありうる」と明示しております。ですから(政府のいうように)あらゆる兵たん(それ自体)が、すべて武力の行使ではないなどということは、ありえないということは、国際司法裁判所も明示していることであります。

 しかもこれまでは、「非戦闘地域」に限るとか、「弾薬の補給をやらない」とかの「歯止め」がありましたが、今回の法案はそれらの「歯止め」も外してしまっているじゃないですか。「武力の行使と一体でない後方支援」というゴマカシは、いよいよ通用するものではありません。

 今日の質疑を通じて、政府の法案が、武力の行使を禁止した憲法9条1項に反する違憲立法であることは、明瞭になったと思います。絶対に認めるわけにはまいりません。

 私は、引き続き明日も質疑に立ち、PKO法改定と、集団的自衛権の問題について、引き続き質疑をしていきたいと思います。終わります。