志位和夫 日本共産党

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国会質問

2023年10月26日(木)

志位委員長の代表質問 衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が25日の衆院本会議で行った、岸田文雄首相の所信表明演説(23日)に対する代表質問は次の通りです。


イスラエル・ガザ紛争――日本政府の対応を問う

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=25日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。

 イスラエル・ガザ紛争による人道危機が深刻です。

 ハマスによる無差別攻撃は明白な国際法違反であり、わが党は、これを強く非難するとともに、人質の即時解放を求めます。

 同時に、イスラエルによる大規模な空爆、完全封鎖、住民の移動の強制、おびただしい犠牲をもたらす地上侵攻の動きは、どれも国際法を乱暴に蹂躙(じゅうりん)するものです。わが党は、イスラエルに対して、ガザに人道危機をもたらしているすべての行動を中止し、地上侵攻を中止することを強く求めます。

 日本共産党は、双方に対し、暴力の連鎖を止め、人道支援のアクセスを保障し、即時停戦に向けた交渉のテーブルにつくことを求めます。

 日本政府に対し二つの点を求めます。

 第一に、ハマスに対する非難だけでなく、イスラエルに対して無法な空爆、封鎖、地上侵攻の中止を求めるべきではありませんか。

 第二に、イスラエル、パレスチナ双方との関係を最大限に生かし、停戦に向けた交渉を促すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

「失われた30年」を打開し、暮らしに希望を

「コストカット型経済」にしてしまったのは誰か

 物価高騰から暮らしを守ることは今国会の最大の課題です。

 物価高騰でなぜこんなにも暮らしが苦しいか。それは根本に、30年に及ぶ経済の停滞と暮らしの困難――「失われた30年」があるからではないでしょうか。働く人の実質賃金は、26年間で年64万円も減っています。長期にわたって実質賃金が減り続けているところに物価高騰が襲ってきた。ここに暮らしの特別の困難があるのではないでしょうか。

 この事実は、総理も認めざるをえないようです。総理は、所信表明で、この30年間、「コストカット型経済」を続け、賃金や設備投資までコストカットの対象にしてきたことが、経済の停滞を招いたとし、「コストカット型経済」からの「完全脱却」を主張しています。それでは伺います。日本経済を「コストカット型経済」にしてしまったのはいったい誰なのか。

 賃金のコストカットのために、非正規雇用を4割にまで広げてしまった。企業の社会保険料のコストカットのために、医療・年金・介護など社会保障の連続切り下げを進めてきた。企業の税のコストカットのために、法人税を大幅に減税し、その穴埋めに消費税の連続大増税を進めてきた。

 どれもこれも、財界の旗振りにしたがって自民党政治がやってきたことではありませんか。「コストカット型経済」から抜け出すためには、30年来の経済政策の大本からの切り替えが必要だと考えますがいかがですか。答弁を求めます。

中小企業支援と一体に、最低賃金の1500円への引き上げを

 日本共産党は、9月28日、「経済再生プラン」を発表し、「失われた30年」を打開して暮らしに希望がもてる日本をつくるために、働き方、税・財政、エネルギーと食料――3本柱の改革案を提案しました。いくつかの中心課題について総理の見解を伺います。

 第一は、最低賃金の抜本的引き上げです。

 改定された最低賃金は全国加重平均で1004円。ドイツ1923円、イギリス1875円、フランス1785円の5~6割程度です。総理には、深刻な国際的立ち遅れの認識がありますか。

 全労連などと静岡県立大学の研究者が共同で行った最低生計費調査によると、単身の若者が暮らしていくのに必要な生計費は、全国どこでも時給1500円~1600円以上となっています。1004円では労働者の生計費を満たしていない――とても暮らしていけない水準であるという事実をお認めになりますか。

 総理は、「2030年代半ばに1500円に」と言っていますが、生計費に満たない現状を十数年先まで我慢せよというのですか。

 中小企業支援と一体に、全国一律で1500円への最低賃金引き上げは急務と考えませんか。大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、10兆円程度の税収を中小企業の賃上げへの直接支援にあてるべきであります。総理の答弁を求めます。

「非正規ワーカー待遇改善法案」を提案する

 第二は、非正規ワーカーの待遇を抜本的に改善することです。

 「正規と同じ仕事をしているのに、賃金が低く、ボーナスも出ず、育児休暇も取れない」。痛切な訴えであります。

 非正規ワーカーは、この20年で1・5倍、2100万人を超えています。ところが賃金は正規労働者の67%、そのうえ、ボーナスや各種手当も出ないなどの低賃金が押し付けられています。非正規雇用の7割が女性であり、生涯賃金で1億円もの男女賃金格差をつくりだしています。

 総理は、非正規ワーカーのこの現状が、労働者全体の実質賃金を引き下げ、雇用におけるジェンダー不平等の大きな要因となっているという事実をお認めになりますか。お答えください。

 日本共産党は、10月18日、「非正規ワーカー待遇改善法案」を提案しました。非正規ワーカーの雇用の安定をはかり、差別と格差をなくし、ジェンダー平等を促進する包括的提案であります。どれもヨーロッパでは当たり前のことです。総理、こうした包括的な保護立法が必要と考えませんか。答弁を求めます。

消費税は廃止をめざし緊急に5%に減税、インボイス増税の中止を

 第三は、消費税減税です。

 総理は、所信表明で、税収の増収分の一部を「還元」するとのべ、「減税」を言い出しました。しかしその中身は、効果がないことが証明ずみの「賃上げ減税」の名での大企業減税と、期限つきの所得税減税です。所得税減税は所得の少ない人への恩恵がないうえ、長期の実質賃金減少のもとでの時限的措置では「焼け石に水」であります。

 総理に問いたい。「減税」といいながら、なぜ消費税減税だけはタブーにするのですか。物価高騰は食料品を中心にあらゆる品目に及んでいます。消費税減税こそが直接物価を下げる最も効果的対策と考えませんか。

 富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税は廃止をめざし緊急に5%に減税すべきです。インボイス増税はきっぱり中止すべきです。答弁を求めます。

物価上昇におうじて「増える年金」への改革を

 第四は、年金の引き上げです。

 物価高騰で年金の目減りがとまりません。

 「貯金を取り崩しての暮らしです。命がつきるのか、貯金がつきるのか、どっちが早いかと、不安でいっぱいです」。高齢者の切実な声であります。

 この10年間で年金額200万円の方の年金は、なんと15万円も目減りしました。マクロ経済スライドなど年金削減のシステムのせいであります。総理、こんな冷酷非情な仕組みを放置したままで良いと考えているのですか。

 日本共産党は、年金削減をやめ、物価上昇におうじて「増える年金」への改革を行うことを提案します。高額所得者への保険料優遇の是正、年金積立金の計画的活用、現役世代の賃上げによって、持続可能な年金制度をつくることはできます。総理、政治の責任で、高齢者にも希望と安心を届けるべきではありませんか。答弁を求めます。

大学等の学費は無償をめざしただちに半額に、奨学金は給付制に、返済の半額免除を

 第五は、教育費負担の抜本的軽減です。

 高すぎる学費と貧しすぎる奨学金が、若者を苦しめています。

 「多くの学生が、学費を払うため、少しでも割り増しになる深夜バイト、徹夜バイトをやっています。眠くて授業が成り立ちません」。先日、学生のみなさんと懇談したさいに出された訴えであります。

 一方、若者が背負わされている奨学金の借金は、30年間で7倍、10兆円にも及びます。総理、学生を深夜バイト・徹夜バイトに追い立て、大学を卒業したら10兆円もの借金を背負わせる。こんな政治が、まともな政治といえるでしょうか。

 高等教育無償化をめざし、ただちに大学等の学費を半額にし、入学金制度を廃止し、奨学金を給付制中心にあらため、奨学金返済の半額を免除すべきであります。答弁を求めます。

大軍拡の問題点と平和の対案について

自衛隊「常設統合司令部」設置と「米インド太平洋軍司令部」との一体化をただす

 来年度予算の防衛省の概算要求は、長射程ミサイルの導入・開発が目白押しとなり、米軍再編経費を含めた軍事費は8兆円にまで膨れ上がりました。

 重大なことは、概算要求で、自衛隊の「常設統合司令部」の設置のための予算がつけられ、その目的が「米インド太平洋軍司令部と調整する機能」の強化にあることが初めて明記されたことです。総理、これは米インド太平洋軍の指揮のもとに、自衛隊が事実上組み込まれることを意味するものではありませんか。お答えください。

 私は、1月の予算委員会で、長射程ミサイル保有の目的が、米国の主導する「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に参加するためのものであること、米国はIAMDの基本原則に「先制攻撃」を公然とすえていることを明らかにし、米国の先制攻撃の戦争に自衛隊が参戦する危険性を告発いたしました。総理、自衛隊の「常設統合司令部」の設置と、米インド太平洋軍司令部との一体化は、そうした危険な道の具体化そのものではありませんか。しかと、お答えいただきたい。

「抑止」の名で「恐怖」を与えるのでなく、「安心」を与える外交で平和構築を

 総理は、「日米同盟の抑止力の強化が日本を守る道」と繰り返します。しかし「抑止」の本質は、「恐怖によって相手を思いとどまらせる」ことにあります。日本が「恐怖」で構えたら、相手も「恐怖」で構え、「恐怖対恐怖」「軍事対軍事」の悪循環に落ち込みます。この道こそ日本の平和を危うくする道ではないでしょうか。

 相手に「恐怖」を与えるのでなく、「安心」を与える外交こそ必要です。そのような外交を実践しているのがASEAN(東南アジア諸国連合)です。ASEANと協力して、ASEANが提唱している「ASEANインド太平洋構想」――「東アジアサミット」という日米中を含む東アジアのすべての国を包摂する平和の枠組みを発展させ、東アジアを戦争の心配のない地域にしていく構想を実現するための外交を進めることにこそ、平和をつくる希望があるのではないでしょうか。総理の見解を求めます。

沖縄・辺野古新基地建設問題――「著しく公益を害して」いるのは誰か

 沖縄県・辺野古新基地建設について、政府は、県に代わって設計変更を承認する「代執行」に向け提訴を行いました。

 沖縄県の上告を退けた最高裁判決は、憲法がさだめる地方自治をないがしろにする不当なものであり、それを背景にした「代執行」もまったく不当なものですが、「代執行」は「放置することにより著しく公益を害することが明らかであるとき」に限定されています。それでは「著しく公益を害して」いるのは誰か。

 1996年の日米合意で普天間基地の返還を決めましたが、「県内移設」を条件にしたため、この「世界一危険な基地」は、27年間、1ミリも動いていないではないですか。総理、沖縄県民の民意に反して「県内移設」に固執してきた政府こそが「著しく公益を害して」いることは明らかではないですか。

 辺野古新基地建設の中止・普天間基地の即時無条件撤去を強く求めて、質問を終わります。